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2012年4月12日木曜日

iPadのPC化?

この先ブレイクスルーが必要なApple iPadのDRAMメモリ技術を読んでいて思ったのだけれど、 iPadは当初想定されていた以上にPC化してきているのだと思う。NECのPC-98的と言ってもいいかもしれない。違いがあるとすれば、Appleはソフトウェアが本業の会社であるということくらいか。一歩間違えれば袋小路に陥る可能性がある。

今のアップルの躍進はMacOSⅩのリリースに寄るところが大きい。爆弾だらけだった林檎OSは、安定性と同時に、成長著しいPCと同じフィールドに降り立った。これにより、Winodwsと、ハードウェア的には同じ土俵で戦えるようになった。BOOTCAMPの存在も極めて大きかったと思うが、OSを含めたソフトの優位性はあっても、ハードが非力だったMacにとっては大いなる躍進だった。ただし、Windowsに比べて割高という評価は、以後ついてまわることになるが。

この時点でAppleが達成したものは、同等のハード性能を、ソフトウェアやサービスに寄り差別化する事だった。ハードが同等なため、Windowsに対する第二の選択肢として受け入れられやすくなった。Macにおいては、今もこの流れは続く。

Intelの新CPUであるIvyBridgeが発売されるが、それを搭載したMacの発売は当然のものとして受け入れられ、消費者に驚きはない。Appleは完全にPCハード市場の一員となり、その恩恵を受けている。特にメモリーなどの周辺機器は出荷台数が価格に直結するスケールメリットがほぼすべての市場なので、PC化する恩恵は甚大だった。Apple側の採用するハードウェアも、数あるPC規格のなかから段々にサーバー向けから一般向けの安価な製品にシフトしつつあるようでもある。少し補足すると、Macはパーツは標準化したがハードウェアセットとしては固有の存在で在り続けた。自作PCでMacOSを走らせることは、一部のハックを除いては実現していない。

 WindowsやOfficeを擁するMicrosoftは、その名のとおりソフトウェア会社である。ハードウェアに関しては、マウス等の周辺機器を除いて成功例は少ない。ハードについては良くて二流の評価しか下せないだろう。APPLEはハードを捨てず、Microsoftになる道を選ばなかった。この辺りの舵取りが絶妙だったがゆえに、Appleは今日に至る道を歩むことになる。

 IntelCPU対応はAppleにとっての大きな賭けだったが、ハードウェア環境を固定化することで同社は乗り越えた。この経験を武器に同社は、ソフトウェアやサービスを武器に成長を開始する。iPodから始まった一つの流れはiOSという形で結実し、iPhoneやiPadへと進化した。言ってみれば、Mac専用ハードというプラットフォームから大きく踏み出すことで、より大きな力を得ることに成功したわけだ。これはハードに関しては勝ち馬に乗る戦略、専用ハードのために半導体を開発するのでなく、主流となったものを採用する流れにつながる。これが恐らく第一段階だっただろう。ハードが同じ環境になったことで、ソフトウェアやサービスの善し悪しが決め手になる。消費者にとっては分かりやすくなった。

 ここで少し整理しよう。普及したパーツを採用するメリットが発生したのが第一段階だとすると、ソフトウェアやサービスに寄る付加価値で採用したパーツの発展に寄与するようになったのが第二段階だ。OSでいえば、IntelCPUで動くMacOSが第一段階で、iOSデバイスが第二段階となる。消費者目線では、ハードが同じで、どちらを選ぶかは趣味の問題というのが第一段階だったとすると、ハードとソフト、或いはサービスが一体となって強力な商品となったのが第二段階となる。商品というのは本来、ハードやソフト、サービスを分けて考えるべきでないとすれば、今の在り方というのは理想的といえるかもしれない。

 既に世の中はタブレットというだけではダメな時代に突入している。格安から日本の家電メーカーの高級品までAndroidタブレットの売れ行きが今ひとつなのが何よりの証拠だろう。ソフトとハードという両輪が揃わなければ意味が無いという、APPLEのこれまでの歩みが認められた事になるだろう。

 周知のようにiOSデバイスは、ソフトだけでなくハードとソフト一体で進化してきた。iPhone4Sの特色にsiriが存在するが、実行にはハードウェアの性能を要するため、古いバージョンのiOSデバイスでは動かないとされる。採用されているチップ類は、汎用部品のカスタムチップだ。ここでは、Appleの製品によって半導体の市場が牽引されるようになってきた事がわかる。ここで問題になるのは、従来は市場や半導体メーカーが決定した方向性を、再びAPPLEが決定する立場になったことだろう。

 ここで重要なのは、APPLEはMicrosoftを部分的には追い抜いたとはいえ、まだ完全には追い越していない点だ。むしろMicrosoftがPCにおいて停滞していた対象、ぶつかった壁に、今初めて直面したように見える点だ。PCでは永遠の二番手で在り続けた訳だが、遂にiOSデバイスによってトップに立ったところといえる。これまでの道のりは独自のものではあったが、PCのもたらした成功が携帯デバイスで再現されたという見方もできる。なので頭に戻るが、iPadは当初想定されている以上にPC化したと言える。

 此処から先のAPPLEの戦略は未知数だ。MicrosoftはWindows8のタブレット対応という、周回遅れ、iPadやAndroidを追いかけての戦略を立てている。対する先行者のAPPLEは壁を突破できるのだろうか? それともGoogleがこの先へ進むのだろうか? APPLEはこれまで失敗もあったがハードとソフトの両輪、そして収益のバランスが良かった。株価によってAPPLEは比類なき存在となり、自動車を抜いてアメリカの魅力的産業の根源たる存在になってきたといえる。

 かつて日本のNECのPC-98は一世を風靡し、ソフトウェアが溢れ、それ以外のコンピューターなど想像ができない程圧倒的な存在だった。ただし文化は成熟を迎えると次なる段階を進むことが大きな障害となる場合がある。Maicrosoftの場合は、苦労してXPという大きな踊り場を乗り越えつつある。APPLEも同様に成長の鈍化を迎えるのか、或いは驚きの飛躍を見せるのか? 株価の勢いが最高潮に達しつつある今、APPLEは成熟しつつあるように見える。だがしかし、発展途上であることに期待したいと思う。

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