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2011年2月28日月曜日

スピード感のない3DSビジネス

 3DSを購入して少し経った。ローンチソフトにしては作り込みの甘い部分も見受けられる中、多くのソフトが意外なほど高評価だったようだ。セールス的にもそれなりに期待でき、ゲーム会社としてはアリなマーケットになれるかもしれない。

 その一方で3DSは当然ながらスマートフォンではないので操作感やソフトの多様性では一歩引く印象をうける。すれちがい通信は、都心でも反応はわずかで持ち歩いてる人は少ない印象。まだ出始めということもあるが、ドラクエの印象が強いだけに寂しい。

 3DSの印象は悪いものではなかった。むしろ良いものだが、過熱というほどの事でもない。市場は新たなるソフトを熱望しているので、ガンガンソフトウェアをリリースしてNGP以前に市場を開拓する事が、任天堂にとって最良の選択ではないかと思う。今の任天堂にスピード感が感じられないのが、少し気になる点だ。今後のソフトウェアや本体更新の予定が全く見えないのは良くないと思う。情報は小出しでいいので、関心の持続性を狙うべきではないだろうか。

2011年2月26日土曜日

3DS到着

 3DSが到着したので、ざっくりとレビュー。見た目のチープ感は少なくとも感じなかった。初期設定での立体感もそれなり。音質は間違いなく良くなっている。

 最初の躓きは、「OK」をタッチペンで押させる場合と、Aボタンを押させる場合。設定でも普通に出てくる動作なのだが、ペンとボタンの共存が出来ず、いちいち持ち替えて押す必要があるのが苦痛だった。正直、DS以上にタブレット操作を要求される局面が増えてる感触。個人的には不要なんだけどな・・・。十字キーとアナログスティックの位置も悪い。ペンの位置も取りづらくなってる。

 3D表示に関してはゴミだと判断する。よく言われるように、左右に動くと3Dの視点がずれるのだが、ちょっとした身じろぎでもズレる。それを補正しようとして目が疲れるという悪循環。3D表示自体は悪くないのだが・・・ズレるとイラッとくる。ゲームに没頭すると、自然に3D表示はOFFにするだろう。

 無線LANに関してはDS並みの設定でクリアーだ。ただし、3DS用と、DSソフト用と2回設定しなければならない。しかもブラウザーは本体更新で解禁される機能らしく、現時点で使用できない。ネットにつなぐメリットがないし、DSがテストに成功したというのを確認するくらいしかできない。

 HOMEメニューは全般的にモッサリと動作する。軽快さが微塵も感じられない。正直、初期状態でこれだけ重いと今後が不安になるレベルだ。しかも全体的に分かりづらい。PSPやPS3の軽快さに慣れた人間だとつらく感じるだろう。

 ARに関しては、本体内蔵だけで十分遊べるレベルだ。これが本格的なソフトとして開発されるとかなり面白くなりそうな手応えは感じる。3DSはやはりそっち方向だろう。

 正直、製品としての完成度は予想以上に低い。ソフトで是正されるなら良いのだが、任天堂の自信作というのは信じがたい。明らかに、DSの方が衝撃性は上だった。普通の人は購入を見送るレベルかなぁ、と思う。欲しいソフトが出てからで問題ないだろう、これは。

2011年2月25日金曜日

追い詰められた独裁者の行方

 スイス銀行がリビアの独裁者カダフィ大佐の資産があれば凍結すると発表した。ムバラクもそうだが、近年、IT化で手の内が分かってきたのか独裁者の資産は凍結されやすい。フィリピンのイメルダ夫人の資産も凍結すればよかったのにと感じる。

 リビアの場合、反乱側がカダフィ大佐に圧倒される危険性はなくなったというだけで、まだカダフィに忠誠を誓う(契約で縛られた)傭兵が存在する。資金を断てば傭兵はいずれ離れるはずだし、石油資源も反乱軍の抑えた東部に集中しているらしい。スイスの件は、隠し財産というカダフィの補給路を絶つ狙いがあるのだろう。つまり国際的に信用される財産という点でカダフィはかなり不利になった。

 リビアでカダフィが持ちこたえている(あるいは国軍の反発を招いた)要因に傭兵の存在があったけれど、エジプトと比較すると改革がズムーズでなかった訳で、独裁者的には一定の需要があるのかもしれない。しかし国土の蹂躙ぶりを考慮すると傭兵はいかがなものかと思う。流れには逆らわないほうが結果として丸く収まる可能性が高い。

 独裁者は死ぬしかないのか、というのは大いなるテーマだ。イメルダ夫人以外の成功事例はなく、ピノチェト元大統領でさえスペインの司法当局から英国で逮捕された。あの事例は国際法や「正義」にまつわる胡散くさい事例だったと今でも思うが、結果的にイギリスは苦慮した挙句、健康状態からチリ帰国を認めた。

 カダフィは独裁者の末路は熟知しているはずで、ムバラクのその後についても「殺害された」と判断しているだろう。国外に退去しても、最終的に逮捕され、裁判にかけられると判断しているはずだ。狂犬の異名を取るだけに、全てを敵に回して徹底的に戦い抜く姿勢を見せている。

 日本の歴史小説を見ると城攻めの基本は、城兵の逃げ場をあえて残しておく事だとある。逃げ道のない敵は、背水の陣というべきで手ごわい。私の見る限り、持ちこたえたカダフィ大佐は、もう少し粘りそうに思える。リビアは、当分内戦状態が続くのかもしれない。石油の出荷を優先すると、リビアが分断統治されたり、何らかの協定が結ばれて、カダフィが延命する可能性が出てきそうに思える。リビアの反乱側が取るべきなのは、カダフィの逃げ場を確保することであって、それがない限り狂犬は噛みつきまくるだけだろう。しかし国際社会に、独裁者の逃げ場は存在しない。あえていえば、アメリカだけがそれを受け入れる土壌がある。

 リビアの件は予定されていたというより、やはり飛び火した印象が強い。リビアも既に国際経済の中に組み込まれているので、国際世論は早期解決を望んでいる。それは強者の理論、力で押さえ込んだほうが勝ちという事でもある。アメリカが調停しないと、この件は更に長引く。オバマ大統領は一連の革命に強い反応を示さないが、こういう時こそポーズでもカウボーイを気取ったほうがいいのは確かだ。それが超大国の威信というものだろう。

 アメリカの出方を見ていても、カダフィは暗殺されない限り健在なのかな、と思う。兵糧攻めは打つ手が無い時に行われるものだからだ。事態は既に政治や交渉の局面に入っているが、アメリカの姿はそこに見えない。カダフィはある意味アメリカを信頼しているはずなので、アメリカの約束以外有効と認めないだろう。リビアの国民にとっては独裁者から解放されるチャンスだった。ただ、カダフィ失脚にすんなり繋がるようには私には思えない。幾つかの材料が不足しており、このままずっと内戦状態が続くように思える。

2011年2月24日木曜日

ARカードが雑誌の付録になる日

 3DSの発売は明後日だが、すでにフライングでゲットした猛者もいるらしい。こういうのはいつの時代も変らない。明日行列したり、販売情報が飛び交ったり、使用者を目撃したりするんだろうか。ちょっと想像がつかない。

 やはり、3DSで一番衝撃的なのはARカードらしい。明後日の感想は、ARカード関連中心になるだろう。ARカード自体は単なる紙でしかなく、おそらく標準的なプリンターで出力可能なものだ。ソフト側でそれをどう認識させるか、なので、ABCDEの5種類のカードがあれば、ソフトがそれぞれにキャラを割り当てているだけなのかもしれない。ただ、この場合、ARカード自体を配布する意義は薄くなる。本体同梱のARカードで代用できてしまうからだ。

 3DSは複数のARカードの読み込みに対応しているらしいので、子供向けのカードなどを読み込ませると面白い。古い例で恐縮だが、ビックリマンのARカードを覗くと、ソフトウエア越しにキャラの立体モデルが登場する、と言う事になるだろうか。対象はガンダムでも、ポケモンでも構わない。

 カードの種類が多ければ本体同梱で賄えない訳なので、カードダスなり雑誌のふろくなり、TGCなりのカードにAR情報が組み込まれていれば、3DSでそれが立体的に見えるかもしれない。対応ソフトが必要だが、先にカードを集めておいて、後で3DSと本体を買うパターンも考えられる。子供向けとしては、オマケから入ってゲーム機本体を買わせる所まで成功した例は聞いたことがないが、キャラクター人気と捉えれば、可能性はあるだろう。特に、ポケモンとのタイアップは実に現実的で手堅い路線だ。3D立体視は幼児向けではないが、このようなゲーム内容と直接関係しないコレクション性は、低年齢児童の楽しみ方として定着する可能性さえある。ソフトの中古売却防止策としても有効に機能するだろう。

 ARカードは必ずしも3DS固有の機能ではないが、ARカード市場の立ち上げに成功する可能性があるとしたら3DSしかない。ただ、冒頭で述べたように立体視するのに必要な情報自体は簡単にコピー可能なものではないかと思う。が、それもまた子供向け玩具とか、コレクターアイテムとしては適当なものかもしれない。お金を出して買い求めるより、オマケ的な何かであるべきだろう。

 この手のカード収集と小学生は異常に相性が良いのは歴史が立証している。かつて、とあるカードゲームの発行元はレアカードを刷っているのを見て「まるで現金を刷っているようだ」と言ったらしいが、そんな時代がまた再現してしまうのかもしれない。

2011年2月22日火曜日

スマートフォンとゲームの立ち位置

 今日はスマートフォンとゲームの立ち位置について。iPhone4は優れたゲーム機だとAppleは主張しているらしい。私はそうは思わないが、Appleの言い分にも一理ある。綺麗な液晶、ダウンロードによるゲーム配信、ソフトが安価であること、任天堂DSに勝る性能で、スマートフォンは理想のゲーム機と言えないこともない。

 私が思うゲーム機の定義は、ゲーム専用の周辺機器が充実しているかどうかだと思う。iPhone4は液晶に貼るタイプの十字キーなど発売されている。なので半分はゲーム機にカテゴライズしてもいい。この定義で外れるのは、ピピン@ソフトが動作したPowerMacだろうか。WindowsPCも、FPS専用コントローラーの存在からゲーム機認定してもいいと思う。

 私がここで強く言いたいのは、ゲーム機なら本体とソフト以外の周辺環境も整備する必要があるということだ。Appleはゲーム用のコントロールデバイスは全てタッチで済ませる方針なのが気に入らない。Appleは単にゲームの動くプラットフォームを用意しているだけで、どうすればより快適になるかを考えては居ないからだ。

 SONYはコントローラー完備のXperiaPlay以外に、PSSに対応したAndroidのPAD型端末を出すという噂がある。電子書籍リーダーにSONYは力を入れているので当然かも知れないが、PSS対応となればコントローラーが必要になる。おそらくPSPgoと同じくPS3のコントローラーが接続可能になるのではないかと思う。そういった対応は、まず基本形を示さないと、サードも盛り上げにくい。

 AndroidもiOSも現状、ゲーム機としての周辺環境に大差はない。ただ、PSSが登場すればAndroid陣営が活気づき、ゲーム周辺環境が整備される可能性が高い。

 従来、Appleは顧客のニーズに合致した製品を出すより、自社の製品に顧客を合わせることに長けていた。ただ、ジョブズが病気療養で第一線を退いた現在、重大な岐路に差し掛かっている。ゲーム機としてビジネスをするならコントロール系を何とかしないと、これ以上の発展は見込めない。電子書籍リーダーとしてもそうだ。後発品と戦うには、改良を重ねることが重要だ。本体性能向上とかソフト充実以外に、周辺環境整備と最適化が行われなければならない。Appleは伝統的にそこが弱い。そして他社の参入を嫌う。

 iPhone4が次にどう進化すればいいのか、既に消費者には見えていない。ということは、Appleにも見えていないと思う。「次のiPhoneにはこの機能が必須だ」という要素が見えていないし示されても居ないということは、私にはiOSのオワコンの兆しのように思えてならない。

2011年2月21日月曜日

年末商戦に向けて

 年末商戦に向けてのゲームビジネス展開について考えてみる。3DSは本体をジワジワと出荷し、年末に大作をぶつけてくるプランで間違いないだろう。春、夏、秋にそれぞれ出荷の伸びそうなソフトを用意するはずで、例えば、春はパイロットウイングス、夏はゼルダ、秋はマリオカートといった形でリリースし、3DSの息切れを感じさせない展開を目指すはずだ。無理のない出荷を続けることで、本体出荷数と遊べるソフトを増やしておく計算だ。

 NGPは年内発売なので、11月か12月といった年末商戦に向けてハードとソフトを次々に展開する流れだろう。出荷数は不透明だが、話題性のある新製品なので品不足になる可能性が極めて高い。3G月額が余程高額でない限り、NGPは瞬殺となるだろう。

 2011年末は、そろそろ遊べるソフトが揃ってきて本体を入手しやすい3DSと、人気沸騰だがまず買えないNGPの競争となる筈だ。ただ、2012年に踏み込むと、3DSが苦戦する展開しか想像できない。

 3DSの戦略は堅実だが、独善的でもある。DSから3DSの買い替えがすんなり進むとは考えにくい。買い替えが進まないのは、普及しすぎたDSの負の遺産でもある。既に3DSのレイトン教授がDS本体で遊べると勘違いしている消費者が話題になっているが、こういった例は多発する筈だ。「3D機能をOFFしたDS版レイトンを出せ」という圧力の高まりすら発生するかもしれない。DSが延命すればするほど、3DSは死にハードになる。DSで十分だという消費者に、3DSをどう売るのか。その答えはまだ見えていない。

 3DS発売のTV報道も3DSとNGPがセットで扱われる事になるだろう。それも3DSの不利に働く。対するNGPは新製品としての話題性十分で、出荷されれば放っておいても売れる状態だ。SONYが言うとおりNGPの価格が手頃なら、売れない理由はない。

 任天堂は正直、今年の年末商戦までのことしか想定していないように感じられる。立ち上がりに苦しむSONYに先行できるだけ有利という判断だったはずだ。しかし予想外にNGPは開発しやすく、開発しがいがあるという評価が出ている。DL販売による互換性で、初期ソフト不足もある程度は対策が可能だ。3DSが生き残るためには2012年以降のソフトが充実している必要が出てきた。しかし任天堂にはまだそこまで見えていない、計画していないのが現実だろう。

 NGP販売後に、3DSに商品としての魅力が残るかは疑問だ。DS未満の普及状況で、NGP以下の性能で、価格的にも大差がない。3DSの旬は2012年頭までで、それ以降はNGPが圧倒的ということになりかねない。Wiiにはまだドラクエが残されているが、そんな具合に誰もが購入する国民的タイトルを2012年に登場させないと、任天堂としてはかなりマズイ展開になるはずだ。

2011年2月19日土曜日

3DSの欠点は任天堂がケチだから

 発売間近の3DSだが既に幾つか構造的欠点が噂されてる。他にもあるかもしれないが、「ロード地獄」、「マルチタッチ不可」、「アナログスティック1本」、「低解像度液晶」、「ポリゴン能力の低さ」、「3D視野角の狭さ」辺りが該当するだろう。DSでは液晶品質の問題もあった。

「ロード地獄」に関してはROMなのに読み込みが遅いという物。DSソフトの容量はMB単位だっただろうが、3DSではGB単位になった。ソケット自体はDS互換なので、読み込み速度もDS並みなのかもしれない。仮に容量が平均10倍になっているのに読み込み速度の高速化が図られていないと仮定する。それは重いだろう対策をしておけよ、という事になる。別の理由もあるかもしれないが、読み込み用のファイルをSDカードに保存する方式なら解消される可能性はある。ま、未対策のローンチは暴落の可能性が高い。

「マルチタッチ不可」は同時に2カ所にタッチできないと言うこと。スマートフォンに比べても不利な点だ。タッチパネルの利用頻度はむしろ下がるかもしれない。これは解消方法はない。あまり複雑なことは出来ない程度で考えるしかないかもしれない。任天堂はコストダウンの達人なので、驚きはない。

「アナログスティック1本」は任天堂にとって痛点である可能性が高い。容易に比較されてしまうからだ。1本しかない理由は、3DS開発時にNGPやXperiaPlayの情報を持っていなかった事に加え、任天堂は基本的にケチだからだと思う。削れそうなものは削った、その結果だろう。64ゼルダの移植からも分かるように3DSは64をイメージしたゲーム機でもあり、64コントローラーを踏襲したのも背景にあるだろう。

「低解像度液晶」はDS時代から分かっててやってる。コスト&消費電力カットが理由で、液晶仕入れと描写力も下げれる。DS互換の影響も大きかったはずだ。

「ポリゴン能力の低さ」はコストカットの影響もあるだろうが、任天堂としては予期していなかっただろう。PSPより少し上を目指したと思われるが、サードの初期開発力だとPSPより少し下になった。PSPの黄金期と3DSの立ち上がり期では、発展途上のソフトが貧相に見えるのは理解できる。が、もう少し基本スペックを上げるべきだっただろう。これはむしろ、DSのレベルがいかにPSP未満だったかという指標かもしれない。

「3D視野角の狭さ」は解消が難しいが、3Dソフトが基本機能にはなり得ない事を示唆している。3Dで遊ぶべき要素と、2D表示の方が適した要素に分化していくように思える。3D要素自体はAR連動ならおもしろいかもしれないが、ゲームの本編部分ではOFFにする消費者も多そうだ。任天堂も「OFFにできます」と既に弁明している。

任天堂はDS互換を理由にしつつ、コストをケチったハードを作った。だが、任天堂の経営陣は賢いのでそれでも3DSを買わせる仕掛けがあるだろう。それが消費者に見えてくるまでは少しかかる。サードのソフトに反映されるのは更に先だ。当面、任天堂以外のソフトを買う必要はないだろう。私は任天堂の仕掛けはARカードでないかと考えているが、それがないサードのローンチのソフトは遠からず暴落するのは間違いないと感じている。

 任天堂はまず自社のソフトで上記の懸念を払拭させるソフトを作成し、その開発情報をサードに開示すべきだ。それが出来なければ3DSはDS以上の任天堂専用機で終わってしまうだろう。

NGP価格戦略

 NGPの価格は当初かなり安い、と伝えられた。私は3G標準搭載で3G課金による収益モデルなので導入価格が安いのだろうと判断した。ドコモとSONYが提携したし、XperiaPlay&PSSにみられるようにSONYのスマートフォン志向は強い。NGPもスマートフォン的な使用が想定されているようだ。想定されている販売モデルはiPadの3Gモデルに近かったのだろう。

 ただ現状は、3G搭載NGPはかなり否定的に受け止められた。その為、Wi-fiモデル待望論が、SCEE幹部からも寄せられるに至る。本体価格の安さへの期待が高まりすぎるのを打ち消すために「PSP並の値段では売れない」という火消しに躍起になっている。NGPは高性能機という評価は揺ぎ無いので、29800円なら問題なく販売可能だろう。ただ29800円がWi-fiか3Gかで売れ行きは変動する。3Gなら、19800円でないと厳しいだろう。

 ツイッターで以前呟いたのだけれど、SONYの3G標準搭載戦略は価格とメリット次第では受け入れられる可能性が高い。「任意の3G通信禁止の場合は最低月額500円」にすればいい。3Gを本体のID確認や本体・ソフトウェア更新に用いるだけならその値段でも折り合いは付けられるだろう。月額500円でも年額6000円となるので、高すぎると言われるかもしれない。ただこれは無料でソフトを1本ダウンロード可能にするなどすれば、批判は低下するはずだ。SONYはPS3でも月額徴収システムPlaystaionPlusを発案して、成功には程遠い状態にあるが、システムとしてはそれに近いものを、NGPへの3G標準搭載とソフト1本ダウンロード無料のセット販売という形で推し進めればいい。少額とはいえSONYには維持費が入り続けるし、3Gによる海賊版対策も容易になる。NGPを買うユーザーなら、年1~2本のソフトウエア購入力はある。DL版で1本手に入るなら、年額6000円程度なら許容される範囲だと思える。3Gでネットや通信対戦をしたい層は、更に高額の料金プランがあってもいい。

 3Gにはデータ通信以外で様々な用途がある。海賊版対策や本体識別、リージョンコードに変わる国別の管理も出来そうだ。月額徴収の大義名分でもある。これらの3Gの有用性は今のところメーカーのSONY側の利便性しか見えないのが問題で、3GによるユーザーメリットをSONYがきちんと説明すれば、価格的にはもう少し上でも受け入れられるかもしれない。

 もう少し細かく見てみる。マジコン対策に、最も効果的なのはPS3のモデルだった。常時接続性と頻繁なアップデートが重要だったということになる。また常時接続性は、SONYが触れていたネットワーク上のセーブデータ保存にも繋がる。PS3とNGPの間のセーブデータ共有が、PSN上に管理される事で実現すると理解しているが、これは月額徴収の収益で維持運営費が考慮されているから実現可能になるのだろう。つまり3Gが標準装備でなく、月額制でなくなれば、SONYのプランは絵に描いた餅でしかなくなる。SONYとしてはNGP事業の先進性と旨みが損なわれるので避けたい展開となる。今は慎重に落とし所を探っているだろう。しかし、Wi-fiと3G併売になってしまうと、収益性という意味ではかなり厳しいはずだ。

 SONYの3G戦略の実際は不明だが、たぶんもっと消費者にとって負担の大きな内容だった可能性は高い。ドコモの回線速度はとにかく高いので、300k通信でも結構徴収される。消費者はその事を熟知しているので、NGPの3G標準搭載には否定的だ。月額が発生する場合は、欲しいソフトが出るまで買い控えが起こるだろう。

 ドコモとは話し合いが付いていたかもしれないが、各国の通信キャリアとの話し合いもまだだっただろう。NGPの海外展開も見えていない。通信キャリアとの交渉の際、SONYは足元を見られかねない。余計な苦労をせずに本体だけ売ればいいwi-fiモデルをSCEEが要望するのも当然かも知れない。この状況から消費者の納得する価格で3G通信キャリアを説得するのはかなり難易度が高い

 月額が発生する場合、NGPは子どもが買える玩具ではなくなる。それはかつてPS3が通った道だ。3DSが圧倒的に有利になるだろう。実際、iPodTouchは子供の購入者層が多いという話がある。子供には回線費負担費用は捻出できないのはほぼ確実だ。ソフトの購入費がやっとだろう。Wi-fiモデルなら3DSが漁夫の利を占めるを回避出来るが、SONYが考えている市場の立ち上げには失敗する可能性がある。私は3G通信を抑えた低額の月額制が鍵だと考えているが、SONYやドコモが考えていたのはもっと高額な定額制だったのだろう。しかし、NGPとスマートフォンの2台持ちをする人は居ないだろうから、NGPの通信費は抑える方向性でなければ成功はしない。

 NGP自体は高性能機なので、高いものですが、安く購入頂けるように工夫します、の戦略が良かったはずだ。人間はリボ払いには鈍感な生き物である。月額の価格設定次第でNGPは売れ、SONYの収益性も確保できるだろう。SONYは3Gモデルで、本体販売台数が収益に直結するモデルを確立しようとしている。回線契約をしてあまり使わず寝かせたままの消費者は多いし、あながち間違ってはいない。SONYに欠けているのはお子様向けのプランの確保で、ソフトウェアのダウンロード権とセット販売することでそこをクリアするしかない。SONYはこれ以上叩かれることを恐れているが、いつかは発表しなければならないことなので、消費者に受け入れやすい形で堂々と進めていくしかない。3Gモデル搭載に対する否定的反応で狼狽えて火消しに走るのはおかしい。

 SONYのトップは冷静な判断を下せるはずだが、国内の状況だけで販売を進めてしまったのかもしれない。ただ低額プランが実現可能なら、国内でまずそれを実現するべきだ。実例があれば消費者はそれを後押しするので、各国でも通信キャリアが折れる可能性はある。しかしながら、高額プランしか用意されていなかったなら、事業規模を縮小してWI-FIモデルでいくしかない。SONY内部ではそのせめぎ合いが行われていて、調整に調整を重ねているのだろう。

2011年2月18日金曜日

3DSの3Dに込められた三つの意味(たぶん)

最初にいってしまうと、「3D液晶による立体視」「ポリゴン処理能力向上による3Dモデル」「ARコードによる仮想化技術」の3つだ。本当は「3Dがゲームに必要であるか」について正面から書きたかったけれど、諦めた。3DSの3D液晶を見たことがないので流石に無理だ。なので今回はもう少し大きな、3DSの3Dで任天堂が何を意図しているかについて書いてみる。

 「3D液晶による立体視」は既に周知のことなのでここではあまり触れない。ただ、SONYがPS3で実現した専用眼鏡と専用テレビによる3Dと、3DSの裸眼立体視は方式が異なるため、見え方も異なるようである。近年、3Dといえば飛び出す技術と知られているが、任天堂の技術はどうも飛び出さないみたいだ。奥行きが増すだけという話もある。この辺りは、未見により書くのを諦めたのでご容赦願いたいが、根本となる技術が異なるという認識だけあれば良いものと思われる。任天堂にとっては、おそらくスマートフォンとの差別化の切り札となる点でもあるが、その機能をテストしたユーザーに不満や不安が現在生じている機能でもある。

 「ポリゴン処理能力向上による3Dモデル」は、実は任天堂が一番喜んでいる要素ではないかと思うが、2Dゲーム主体だったDSから、ポリゴンで綺麗に描写された立体的なゲームづくりが可能になった事を意味する。DSでもポリゴンは扱えたがiPhoneのラブプラスを見れば分かるようにDS版は低性能が顕著だった。今回、nintendog + catsでもDS版からの進化として、グラフィック向上が明言されている。サードでもポリゴンを全面に出した作品が多く、NGPと比べれば劣るにしても、満足できる水準に達した事は確実と思われる。NGPやスマートフォンとの差別化という点では微妙だが、ゲーム作りに於いては不可欠な進化だった。「パイロットウイングスのような3Dソフトがグリグリ動くぜ」、という任天堂開発陣の喜びの声が聞こえてきそうだ。

 「ARコードによる仮想化技術」は、既にiPhone版ラブプラスで採用されたものと同様の技術だ。3DSは3Dカメラによる3D立体視なので、平面仮想現実よりは、3D仮想現実な分、スマートフォンでできることを超えている。(3D撮影用にカメラを2つ装備したスマートフォンは見かけない)手のひらにARカードを於けば、そこに3Dのキャラクターが浮き上がるという仕組みで、老若男女を問わずその不思議さを体感できることは3DSの高評価につながりうる。おそらく見る、だけでなく、3DSでしか見れない3D写真としても残せるようになるだろう。

 「nintendog + cats」を例にとると、愛犬が立体的に見え、DSよりはるかに綺麗に表示され、手のひらに持ち出せるようになる訳だ。NGPで同じことは機能的に出来ない訳で、任天堂のターゲット層にDSより進化した3DSを印象づけることができるかもしれない。3Dに不安を持っている人は、ゲームの3D部分の程度に不満をいだいていると思われるが、ARと組み合わせる事で、その不満が解消される可能性はある。ARもそこまで特別なことは必要なく、ゲーム制作の過程で3Dモデリングされたものを表示すれば良いはずだ。バイオハザードで敵のゾンビが3Dモデリングされているなら、それをARを使って簡単に表示できると面白いと思う。

 巷で言われる「3Dはゲームに不要」論は、主に「3D液晶による立体視」が不要だと説いているように感じられる。ただ、3つの機能が連動して補完しあうことで、新しい体験が生まれるというのが任天堂の意図だろう。それを任天堂は消費者に向けて証明する必要があるが、3Dに反対の人が考えている程、その難易度は高くないように思える。ただし、ハードゲーマーが望む機能かどうかは微妙だ。

 ラブプラスは恋愛ゲーということでヒットしつつも敬遠もされたが、初音ミクはPSPで人気のコンテンツとなった。セガはどちらかといえばSONYよりのスタンスだが、ラブプラスは勿論、初音ミクは3DS向けの題材のように感じられる。初音ミクに限らず、仮想化したキャラクターのゲームというジャンルが定着すれば、3DSがゲーム機の中でユニークな一角を占めることができるようになっても不思議ではないかもしれない。任天堂ハードがギャルゲーハードになるところはあまり想像できないが、ラブプラスの存在を誰も予期できなかったわけで、任天堂とAR&3Dはかなり強力な威力を発揮するかもしれない。

2011年2月17日木曜日

Wiiにおける今後の戦略

 私は巷で期待されているWiiHDが多分出ないだろうと考えている。任天堂にとってその必然性が薄いためだ。単純に「任天堂が儲かるか?」と考えても答えはNOだと思う。今日はそこも含めて、任天堂の据え置き機戦略を考えてみたい。

 据え置き機全体を考えてみると、現在の市場は2分されている。HD化した先進国向けハイエンドの市場と、型落ちの新興国向けローエンドの市場だ。Wiiは現在は先進国向けモデルだが、いずれは新興国向けローエンドに市場を変更する可能性が高い。それは今なお世界で売れ続けているPS2の販売モデルの踏襲になる。新興国向けのゲームは、メガドライブ、サターン、ドリームキャストといった製品を経て、現在PS2が主流になりつつあるようだ。Wiiは性能的にはPS2、ドリームキャストといった辺りに十分対抗できる。PS3、XBOX360はまだまだ現役で在り続けるだろうし、新興国向けのHD化はまだないだろう。そう考えると、非HDでは最後の世代のゲーム機、Wiiは新興国市場でかなりの競争力を発揮できる筈だ。

 Wiiはまだまだ現役で稼げるのでローエンドモデルにくら替えする必要はないが、任天堂のビジョンの中にローエンド化が織り込まれていることは理解するべきだ。出来る限り先進国市場でWiiを引っ張り、然る後にPS2対抗として新興国市場に殴り込みをかける策となる。新興国市場に最適な要素は価格だ。HD化という付加価値をつけて延命すると、新興国で売り出す時の妨げになる。

 WiiのHD化は、いわばWiiがハイエンドであり続ける為の延命策だ。任天堂がHDゲーム機を出す可能性を危ぶみ、Wiiプラットフォームの延命を図る場合の最も有効な解と考える人は多い。既存のWiiソフトに愛着のあるユーザーが多いので、HDでプレイしたいという欲求が強いのも理解できる。もし予測が外れてWiiHDが今年販売されれば、私も予約して買うだろう。だが、WiiHDを発売しても、買い替えを促す効果は期待されているほど高くないとも分析されいるだろう。WiiゲームのHD化はむしろ新型に期待される内容で、任天堂としてはWiiが売れる間は新型の投入もないだろう。

 ソフトウェアの販売傾向も、WiiではRPGがあまり売れていない。新興国市場で受けそうなソフトが多い上に、過去の任天堂の人気作がWiiウェアとしてダウンロード配信されている。反面、Wiiのソフトには、HD化によるテコ入れで伸びそうなソフトが多いわけではない。

 Wiiは本体のモデルチェンジはほとんどなかった。DSとは実に対照的な戦略と言える。Wiiの寿命については任天堂はかなり冷静に分析していることが伺える。任天堂はWiiの延命策をとらないだろう。それは、なるべく同一のモデルで将来的に安く新興国で提供することを想定しているからだ、少なくともそれが私の予測となる。そもそもWiiは当て馬的な要素があって、現在の状況はかなり善戦している。いずれWiiには先進国市場を去らせる覚悟を任天堂は最初から持っていたはずである。

 つまり、任天堂はWiiがハイエンドでなくなってもローエンドに落ちるまでに、ミドルエンドで頑張ることを期待しているといえるかもしれない。任天堂の志向は元々ハイエンドより一歩身を引いたところを良とするので、ミドルエンド市場を構築することが任天堂の明確な目的なのかもしれない。

 携帯機の3DSと同時に据え置き機の刷新をはかるようなやり方を任天堂は好まないのではないかと思うので、。Wiiに関しては現状維持で、3DSとの連携も特に行われないのではないだろうか。3DSが余程失敗しない限り、任天堂は挽回する必要も薄い。3DSの発売は、据え置き機と携帯機のどちらが任天堂に重要かをよく表している。

 つまり、任天堂は携帯機の3DSを社運をかけたハードとして選んだ。なので、据え置き機の新型が必要かの判断も含めて、ゆるゆるとWiiの処分を決めていくのではないかと思う。私が思うに、Wiiは2011年から2012年にかけて、ずっとこんな雰囲気でいくのではないだろうか。その間、Wiiはハイエンド市場から滑り落ち、開発中の大作ソフトの続編で凌ぐのだろう。サードにとっては迷惑な話かもしれないので、そろそろWiiから抜けるサードが増えそうである。それもまぁ、任天堂の予測の範疇と言えるのかもしれない。『Wiiはそろそろ厳しいです。が、3DSでは一緒にがんばりましょう。』が、任天堂の「謙虚さ」というキーワードの背景にあるのかもしれない。

2011年2月16日水曜日

SONYとドコモ

 NGPの発表ではドコモの存在が大きく宣伝されていた(ように思えた)。NGPの3G標準搭載は消費者の支持を得られるかどうかはかなり厳しい情勢だが、NGPの2011年内国内発売について、SONYが自信たっぷりに断言しているからには、ドコモとSONYの提携成功がその背景にあるのはほぼ間違いない。

 NGPの他国での展開が今ひとつハッキリしていないが、これは3G通信キャリアとの商談が全く進めていなかった可能性が高い。日本ではドコモとうまく提携できたのでSCEJは特に3Gモデルを問題視していないかもしれないが、海外のSCE(特に欧州)は3Gモデルの存在意義について悲観的で、Wi-fiモデルを切望しているような報道が多い。

 ソニーエリクソンはauでも端末を提供しているものの、やはりドコモにおける存在感が大きい。NGPでSONYとドコモが提携している事と考え合わせると、XperiaPlayはドコモから発表される可能性が高い。XperiaPlay自体はauで発売しても不思議ではないが、ドコモで発売されるのは8割がた確実と私は考えている。ドコモにとっては提供可能な端末の中で、抵抗感が比較的少ないものだろうからだ。

 ドコモはiPhone対応もあってかAndroidへは力をいれている。初代Xperiaは微妙だったかもしれないが、iモードメールをWi-fiで通信可能にするなどAndroidで商売をしていく姿勢を鮮明にしている。iOS搭載機に対するライバル心も考慮すれば、SONYのPSSなしNGPなりに協力的でも全く不思議ではない。

 (4月以降発売なら自動的にそうなるはずだが)SIMフリーになるかどうかも含めて、ドコモからのXperiaPlayの発表が楽しみだ。春モデルの発表会は既に予告されているので、そこにXperiaPlayが入っていれば、賭けは私の勝ち、といったところか。

格好の受け皿としてのPSS

 PSSは、現時点でPS1とPSSオリジナルゲームの配信が公表されている。そこに加わる可能性があるのがPSP、PS2のソフトで、技術的にも可能だろう。PS2についていえば、XperiaPlayは周知のようにPSPより液晶の解像度が高くNTSCの基準をクリアしてるし、アナログスティックも2つある。(正確にはタッチパッドだが) PSPのダウンロード配信よりPS2のダウンロード配信の方が容量は大きいが、MHP3のDL配信も検討しているのでそこまで特別大きいとは云えない。

 加えて日本のゲーム会社がDSからスマートフォンに走る場合、ラブプラスのようなiOS向け独自アプリの可能性もあるけれど、DSからPSSでの展開も考えられると思うようになった。DSのソフトがPSPに移植される上での障害はタッチパネルだったりするが、XperiaPlayはタッチパネルを装備しており、NGPは背面のみとなっている。PSSでのタッチパネル操作は不明だが、ハードとして用意されている機能を無視するのは現実的でないように思える。

 上記は勿論PSSが成功するという仮定の話だけれど、3DSの互換性が話の裏付けになる。3DSはDSのソフトが動くので、DSソフトを3DS用に作り直す意義は低い。(3D目的でない限り、DSで十分なはずだ。)しかも任天堂はDSでのダウンロード配信が苦手で、DSiもショボイ内容に終わり、3DSでもゲームボーイソフトの配信が予定されているだけである。サードにとってはDSで発売した既存ソフトが売れる可能性はかなり低い。しかし、PSSでDSソフトを販売した場合、一定のシェアは見込める可能性が高い。特にタッチパネルを用いた体感的なゲームは、文化に依存しない分、翻訳などの手間を最小限で提供できる可能性がある。

 DSで出すにあたっての任天堂とのライセンス契約的に可能かは分からないが、続編として出すなどの抜け道はあるのではないかという気がする。DSからの移植はNGPより、むしろPSSに格好のゲーム内容だと思うので、PSP、DSの両ゲームがPSSに集結したら楽しいなと思ったりする。ゲーム業界の垣根は見えない場合が多いので、あくまでも可能性の示唆だが、こういった展開になるかもしれないガタガタガタっと状況がひっくり変える可能性があるのが、SONYの今の戦略の怖さではないかと、そう考えている。

2011年2月15日火曜日

3DSの価格

 3DSの価格は多分高い。任天堂としては世間の反応を見つつ、消費者が許容するギリギリ高めで出してきたのではないかとよく言われている。3Dの液晶以外特に高価な部品はなさそうで、GPUに相当するPICA2000もカスタムモデルのようだが、基本は数年前の技術なのでそこまで高額にはならないだろう。初代DSは2004年末だが、7年前の時点で15000円だった製品が、微妙にアップグレードして1.6倍強の価格になっている。かなり強気の設定だ。原価に関してはおそらく大幅な上昇はしていないのではないかと推測される。液晶の解像度も、さして高くはない。日本経済に関しては実質デフレに近かったと推測されるので、消費者としては素直に「高い高い」といったほうがいい。

 製品を売る際によく言われるのは、定価は高く設定して、そこから値下げして売却するほうが良いということだ。定価を後から高く設定することは出来ないので、潜在的に値引き合戦になっても対抗出来る余裕を設定しておくということである。ゲーム業界でも、ソフトウェアはその傾向が顕著であるし、据え置き機本体も普及と共に価格を引き下げる商法が定着している。ライバルのPSPも苦戦もあってか値下げに踏み切らざるを得なかった。

 ところが、任天堂DSは普及と共に本体価格引き上げを成功させた稀有な実例である。これはDSの国民機的普及が軽量化やカメラ装備や大液晶化などのアップグレードモデルの需要を喚起したためだ。PSPでもハンターズモデルという例があるが、これはDSの成功にならったと見るべきだ。ちなみに、DSからDSliteで1800円増の16800円、DSiで更に2100円増の18900円。DSiLLで更に1100円上げ20000円に到達した。(2010年6月に3DS発表を受けて15000円に値下げした。)

 3DSの発表時、価格は公表されなかった。そして3D熱が冷め切らない時期に発表されたこと、ライバルNGPの存在が予測すらされていなかったこと、任天堂の期待の高性能機という触れ込みに消費者の好感触を得た。結果として、任天堂は自信を深めて25000円という価格に決定したと思われる。

 任天堂の視点に立てば、3DSは次世代機というよりはDSラインナップの最上位機種という位置なのかもしれない。確かに専用ソフトは存在するが、DSとの後方互換は維持した。

 ただ、DSの成功は2万円しか予算がない層も3万円に予算がある層も両者を取り込めた事が大きい。2万円の予算で本体+ソフト1本、3万円の予算で本体+ソフト3本が買える。PSPの初期価格は本体19800円で、実際はアクセサリー類とバリューパック価格の26000円が定価とみなされた。別売のメモリースティックDUOがなければセーブの保存も不可能だったのだから、それも当然と言える。

 PSPの場合、3万の予算でソフト1本買えるかどうかだった訳だから、2万の予算の層は本体の購入でさえギリギリで、3万の予算でもソフト1本買えるかどうかぎりぎりの線だった。普及させるにあたっての障害が大きかったと言える。しかもDSは前述のように進化した新機種を発表して買い替え購入を刺激した。買い替えによる本体購入増の背後には、売却ないし譲渡によって新たな消費者の手に渡った旧式機の存在があったと推測され、より安価にDSに参入できる層が拡大したことも、DSブームを支持する結果につながっただろう。DSは普及することが、更なる普及を生み出した。通常とは逆の発想で買い替えを誘導したことが成功につながったと言える。

 3DSはPSPのセット価格に限り無く近い25000円という価格だ。3万円の予算の層であってもソフト1本しか買えない。任天堂もそこは当然計算したはずだ。少なくともPSPの実質初期価格である26000円は超えないように価格設定したのだろう。任天堂の経営陣は馬鹿ではなく、むしろかなり優秀だ。ただし、低価格路線は厳しいと考え、PSP路線でいくことを検討している可能性が高い。

 任天堂はDSの延長線としての3DSを想定しているので、DSからの買い替えが発生するとも考えている。しかし前述の買い替えモデルに倣えば、下取りされたDSは中古品として溜まるだけで、3DSの市場拡大には貢献しない。互換性は後方互換性のみなので、DSユーザーは3DSソフトを遊べない。任天堂もそこには配慮したらしく、一部のDSソフトは3DSで解除される機能があると発表されている。(訂正:これについては誤った情報だったらしい。3DSで解除されるDSソフトの特別な機能はないらしい)ただ、3DSソフトをDSで遊べるという形にならない以上、3DSでソフトを提供する側も、DSしか持っていない消費者も、3DSにシフトすることについて躊躇する可能性がある。なによりも、任天堂の新機種商法が消費者に周知のものとなってしまったので、消費者が新機種まで買い控えする可能性が出てきた。DSもDSlite発売までパッとしなかった訳で、改良モデルを待ち望む声も強い。ただ、私はその可能性はないと考えている。その理由については、WiiHDが出ないのと任天堂の中では同じ理由ではないかと考えている。

 任天堂の3DSに関する主張は、言わば「DSソフトが進化して、3Dで遊べるのが3DSなんです。」ということで、消費者としても同じDSブランドであれば、「3Dは必要ないから、 DSで我慢しなさい」といえる事を計算しているかもしれない。これはつまり、既存のDSブランドを維持する狙いがあるということになる。既に国内屈指の出荷数を誇る DSが1夜にして旧世代化するので、その軟着陸を目指すのは当然な判断であると言えるかもしれない。

 3DSの価格について語る上で重要な要素に、任天堂が予期していなかったと思われるNGPの存在がある。SONYは今回、任天堂が3DSの価格と発売日を発表して変更不可能なところまで踏み込んでから、新型機NGPの存在を明かした。しかもリリースタイミングの目安のみで、価格についても伏せている。このSONYの立ち回り方はかなり賢く、後発でありながら発売遅延の印象を与えず、年末商戦に向けての消費側の準備さえ促していると言える。実際、NGPと3DSの比較では、欲しい端末にNGPを上げる声が圧倒的になった。任天堂は即座に価格を下げて対抗するべきだったかもしれないが、NGPに3DSが発売前から性能で負けた印象を与えかねない事から躊躇し、NGPについて判断する材料不足でその判断を保留し、既存の戦術で押し切った。NGPへの対抗という点で言えば、SONYの失策を待つ戦術をとったと言っていい。

 3DSの発表では拙速に走り、しかも当初の路線を堅持した任天堂の経営判断における失策は少なくないが、NGP出現後も方針を変えずにいるのは結果的に正解だった可能性は高い。任天堂の経営陣は、総じてかなり優秀なのは間違いない。3DSの機能自体、伏せられている点は多数あるので、遊びの仕掛けが多いことが予想され、後は購入者の感想・クチコミに期待している部分も少なからずあるのだろう。任天堂としては、再びブームを作る自信はあるということか。それで伸び悩む場合、堅実に値下げや大作投入による需要喚起を狙っているのだろう。

 DS、Wiiで培ってきた任天堂ブランドは、3DSへの移行失敗による崩壊の危機に瀕しているのは間違いない。少なくとも世間的には新プラットフォーム3DSの存在感を危ぶむ声が強い。最近では3DSの性能がNGPに及ばない事を問題視する声が強い。

 これは任天堂の戦略というよりも、盛者必衰の理、ブームによって実力以上に売れてしまったDSの負の側面が噴出するからだと考える。DSの負の側面の代表はマジコンだが、マジコンの存在が今回の本体価格に反映された可能性は高い。マジコン対策によるコスト増が大きく見積もられたことに加え、DSの価格が安価で本体売却による利益が少なかった事の反省もあるだろう。マジコンで本体しか売れなければ、本体だけで適正な利益が得られるようにするのが任天堂の戦略としては正しい事になる。

 勿論、本来は不正規利用を許さないことが何よりの対策であるべきだが、任天堂としてはマジコン撲滅に失敗しても、本体で利益を確保できるようにしたと思われる。となると、DSブランドの維持という点から見ても、本体での利益確保という点から見ても、任天堂は3DSにそこまでの急拡大を望んでおらず、従って世間で言われるような値下げによる定価の引き下げは当面ないのではないかと考えられる。

 つまりDSで任天堂が学習したことは、『シェアが急拡大しても企業メリットはそこまでじゃなかった。むしろ負担が大きかった。任天堂としてはトップ企業であり続けるより、オンリーワンである方が最も効率が良く、マジコン被害などの標的になりにくい。DSやWiiでもそのつもりだった。やりたいようにやっていけるのが丁度いい。』という事なのかもしれない。少なくともゲーム機という枠の中だけでパイを奪い合うのではなく、趣味娯楽に使う時間・お金の中の少なくない部分を確保する企業であり続けたいと願っているのだろう。これは任天堂の経営陣が常に公言している思想と一致する。私も、立派な考え方だと思う。

 企業体力的な面を見ても、任天堂は超優良企業だが、SONY程の巨大企業ではない。それに任天堂のDSブランドを維持する戦略は、3DS独自ソフトの立ち上げにはマイ ナスに作用する可能性がある。値段的にも、DSが壊れたら買い替えを検討するレベルで、新規に1台ぽんと子どもに買い与えるには高い。となると任天堂としても、3DSの急拡大は望んでいないのかもしれない。既存の路線を守って、急拡大を望まず、逆ざやが生じないように、本体でしっかり利益を確保して商売していけばいい。

 DSとPSPの携帯ゲーム機戦争は、両者ともに生き残る意外な結末を迎えたと言えるのかもしれない。強いて言えば勝者はDSだが、SONYのPSPビジネスは(少なくとも日本では)失敗はしていない。3DSはゲーム機だけがライバルではないと公言している。これは勿論スマートフォンのゲーム機分野での進出に警戒をしている事を示唆しているのだろうけれど、3DSとしては独自のビジネス展開を続ければ企業としてやっていけるという自信も示しているように思えてならない。携帯ゲーム機戦争では、結果としてDSもPSPも撤退せずに生き残ったわけで、任天堂としては自社独自の価値を維持し、消費者に必要とされ続ける存在であることについて自信を持っているのだろう。

 今回、先のゲーム機戦争で敗者とされるSONYは、かなり好戦的で勝ちに来たNGP事業の発表だったといえる。一方の任天堂3DSは何処か大人しく、SONYの挑発に応じる風ではない。任天堂、勝者の余裕といえなくもないが、むしろ任天堂は負けない戦略、生き残る戦略を全面に押し出してきたのかもしれない。勝者にしては意外なまでの謙虚さだが、DSの販売戦略も思えば謙虚な自己分析に立脚していた。今回はマジコンという要素が加わったことで、3DS本体販売で儲かるようにしつつ、自社のブランドを維持して出来る限りやっていけばいいと考えているのだろう。

 消費者の観測と任天堂の実態には、たぶん少しのズレがある。任天堂は絶対的な王者でいる事に、少し疲れたのかもしれない。3DS事業は販売数よりも中身で、利益を確保してくるのかもしれない。シェア数だけでゲームを論じることに、任天堂は少し否定的になっているように感じられた。最も市場の観測通り、NGPの存在に任天堂が焦りに焦っている可能性もある。ただ任天堂自身のウリはニッチセールスに近く、DSもWiiもその基本コンセプトはニッチな路線で、王道はPS3に譲るつもりだったと言えなくもない。任天堂としては生き残れれば、王者であることに拘りがないのかもしれない。

 今回3DSで、ローンチソフトでサードが販売し易いよう、衝突しそうな自社ブランドの展開をすこし遅らせたかのような配慮も見せた任天堂。本当に観測通り謙虚路線なのか今ひとつ確信はないが、今の任天堂を読み解くキーワードが「謙虚」であることは、おそらく間違いがないだろう。

2011年2月14日月曜日

XpreiaPlayとPlayStationSuitue

 今日はソニーエリクソンから正式発表になったXperiaPlayについて。日本での発売は未定だし、旧式ゲームが世界展開される位の話なので、日本の消費者の盛り上がりは特に無い模様。存在が既知の事というのも大きい。

 XperiaPlayはAndroid市場にPSS(PlayStationSuitue)という形態でゲームを配信する、いわばフラグシップ機だ。PSSが盛り上がるかどうかは未知数だが、私は悪くない線を行くと思う。

 期待の1点目は、入力系。Android端末自体にハードウェアキーを用意するのがXperiaPlayだが、blutooth接続でゲームコントローラーを接続できるようなら、Androidタブレットがゲーム機になる展開もありえる。iOS搭載機対抗において入力系での差別化は強力だと思う。SONYがPSSでコントローラー入力に対応するかは分からないが、対応しても何ら不思議ではない。

 期待の2点目は、ソフトウェアラインナップ。PSSはPS1世代のゲームを提供する事が確定しているが、PSSオリジナルゲームの配信も発表されているようだ。また外見的にはPSPgoと酷似しているように、ハードウェアスペック的にはPSPが動作しても何ら不思議ではない。PS1だけだと微妙だが、PSPの配信までいけばゲームでの競争力は維持できる。NGPにおけるPSPのサポートはエミュレーションとダウンロード配信という話なので、PSSでの配信が決まっても驚かない。NGPとPSSの関係性は不透明だが、同時発表なのでサーバー等の設備基板は同一かもしれず、NGPのPS1ゲームと、PSSのPS1ゲームは同じものになるかもしれない。PSS専用ソフトも、NGPで動くことは期待できなくはない。

 期待の3点目はソフトウェアの継承性。Androidで購入したソフトは大半が使い捨てと予想されるが、PSSは端末を乗り越えてもアカウント管理でゲームを引き継げる可能性がある。セーブデータに関しては不明だが、NGPの構想の一つにセーブデータのWEB保存があったので、そのような形でのサービス展開は可能かもしれない。XpreiaPlayの後継機が出たときにゲームが引き継げることは大きいが、PSSを既存のAndroid端末でプレイし、XpreiaPlayを買ってそちらに引き継ぐという事も可能になるかもしれない。イメージとしてはPC用のSTEAMが該当するだろう。これはAndroid内のコンテンツとしては強力な競争力を発揮する。同じソフトを買うなら、ずっと引き継げるPSSの方が良いと考えられるからだ。そしてひょっとすれば、PSSとNGPで同じアカウント、同じセーブを共有できるかもしれない。NGPへの買い替え誘導としても機能する可能性がある。ただこれはNGPが3Gモデル限定でないと達成されない可能性は高い。

 期待の4点目はSIMフリーモデルになる可能性だ。SIMフリーについては何の情報もないが、海外のAndroid端末はSIMフリーで発売されることも多い。加えて、Docomoは2011年以降発売のモデルはSIMフリーにすると宣言している。XperiaPlay自体に魅力はなくても、SIMフリーAndroidはそれ自体がひとつの魅力を持つ。SIMフリーモデルの最大の魅力は、何処の国でも使える事だ。本体価格とキャリアの使用料が分離することも大きい。ネットワーク上の仕組みさえ作っておけば、本体が何処に流通してもSONYは儲かることになる。

 期待の5点目は、PSSが途上国/新興国向けの合法なゲームビジネスとして成功する可能性を秘めていることだ。途上国でのゲーム機本体の販売、ソフトウェアの流通には障害が多い。販売店や販路の確保から始まり、海賊版対策に追われる印象がある。しかし、3G回線でのゲーム配信と、携帯電話と同一化した本体販売は途上国で展開するに当たっての障害が少ない。途上国での3G携帯の普及は有線電話の普及を既にしのいでいるとされるし、既存の電話販売の流れに本体の販売が乗れば、後はソフトウェアをゲーム配信すれば良いだけとなる。PS1のゲームは安価に提供できるはずなので、SONYが型落ちのゲームハードと、ソフトを安く提供する気なら新市場を開拓できるかもしれない。本体に関しては究極的には現地メーカーの製造でも構わないので、PSSという仕組みさえ取り入れてもらえば、SONYは儲かる仕組みは賢い。

 XperiaPlayのハード自体は特別の驚きはないが、その端末が出るに至った発想は非凡ではないかと私は思う。特にアナログスティック(の代わりのタッチパッド)が2つ装備されたことが大きい。日本の消費者はどうしてもPSPの置き換えか、それ以下のコンテンツしかでないと考えているので魅力を感じないのではないかと思うが、PSSという新システムがもたらすものはもっとずっと巨大なものだと勝手に推測している。でなければSONYがわざわざNGPと同時にこんなものをぶつける意味はない。おそらくPSSとNGPは連動した内容になる。

 XperiaPlayを日本の消費者が買うかどうかは不明だが、ゲーム機でなく、Android端末としての魅力はあるのではないかと感じている。SIMフリーでありさえすれば、価格次第で売れても不思議ではない。価格が手頃なら、学生向けスマートフォンとして適合する可能性は高い。

 私個人が買うとすれば、PSSに適合したAndroidのPadモデルが出れば面白いと思う。iPad対抗としては十分だし、HDMIで液晶テレビに全画面出力でき、blutoothのゲームコントローラーが使える。セーブデータもサーバーに保存され、ハードを破損しても消失しない。夢を見過ぎかもしれないが、PSSが大成功すれば、実現しても不思議ではない。

2011年2月13日日曜日

任天堂を3DSへ駆り立てたもの

任天堂のDSは販売数的には勝ちハードである。性能がPSPに比べてチープなのは発売当初から変わらない。任天堂は恐らく当初はもっと短いサイクルでの ゲーム機の発売を考えていたはずで、DS、DSLite、DSi、DSiLLと4回もハードを更新して延命できるとは考えていなかったはずだ。(しかも微 妙に値上がりしている)

 しかしながらDSは消費者のハートを鷲掴みにし、2010年末においてもかなり健在な売れ行きを示している。単 年ではPSPが逆転の兆しを見せているが、DSが2010年の負けハードかといえばそんなことはない。誰が買うのかと個人的には思うDSiLLも、堅調に 販売を伸ばし、実際購入者を見かける事も多い。

 セオリー通りいけば、任天堂はDSの販売を継続して、3DSなんか発売する必要がなかっ た。少なくともSONYの出方を待って、それから動いても良かった筈である。実際問題、WiiについてのHD化の不満の声は、ユーザーとアナリストから噴 出していたものの、DSについては新型LLの存在もあり、売れ行きも堅調だった。ユーザーは、DSよりWiiの次世代化を待ち望んでいたのである。

 「なんで、じゃあ任天堂は3DSを出したの?」という事を今日は考えてみたい。

  まず、Wiiの次世代化についてだが、任天堂は恐らくWiiの次世代機については投げてる。色々な理由があるが、最大の理由は儲からないからだ。 WiiHDを出しても不思議はないが、出さなくても不思議はない。「WiiHDは任天堂が儲かる話ですか?」、と聞けば、誰もが「微妙」と思うのではない か。なら、任天堂は出さないだろう。

 PS3に対抗するWiiの次世代機を開発するというのは立派な目標だけれど、任天堂のゲーム機が受 け入れられる想定価格で必要な機能を備えたハードを開発・販売し、利益を上げるまでソフトを開発し、PS3ないしその後継機との競争に打ち勝つ・・・のは 容易ではない。考えただけで目眩を起こすような難事業だ。

 Wiiでのソフトウェア開発ですらコストがかかるのに、HD化した環境でソフトウェア開発を行うのは難易度が高い。しかも、普及するかどうか分からないハードを開発し、それを売る努力たるや想像を絶する。Wiiが売れたのは、自社ブランド価値以外に低価格の安物だったからだという事を任天堂は他社以上に強く認識していると思われる。

  特に任天堂はハード屋ではないので、さらに一段ハードルは上がると見るべきである。新規ハードの開発は難しく、巷で言われるように、既存WiiをHD出力 できるものなら発売できる可能性は高いが、儲かるかどうかと言う点が最大の障害になるので二の足を踏んでいると思われる。WiiHDに関してはセンサー範 囲や、セキュリティ対策の問題もあるかもしれない。既存のWiiプラットフォームをてこ入れするか、刷新するかの選択肢があるとすれば、諸問題からそのど ちらの道にも問題があると考えていると思う。

 それに対して、DSは売れた。据え置きのゲーム機が1世帯に1台売れればよいのに対して、 DSは1世帯に1台からスタートして、1人1台を達成しつつあった。ハードの販売台数による利益は勿論、ソフトウェアの最大販売数も押し上げた。国民的 ゲームになれば、ハードもソフトも売り上げの桁が変わることを実感したはずである。また、据え置き機に対して、液晶内蔵のDSは住環境の影響が少ない。 TVがなければWiiは遊べないが、DSは単体で遊べるのである。

 携帯ゲーム機を無線で複数人がつなげて遊ぶという形に進化したのは DS/PSPからで、そこに遊びの革新があったと見るべきである。少なくとも任天堂はその点を最重要視した。この為に、携帯型ゲーム機の市場を制すること が任天堂の至上命題になった。ソフトウェア販売市場としてもDSはWiiよりはるかに手堅い市場のはずである。任天堂として注力するべきと考えても何ら不 思議はない。むしろ当然と云える。

 しかし携帯ゲーム機市場に注力することと、新プラットフォームの3DSを投入することはイコールではない。前置きが長くなったが、今日は何故、任天堂が3DSに走ったかを考えてみる。

  任天堂のことを考えるとき、任天堂は常にソフトウェアから入る点を考慮すべきだ。任天堂のキーマンはいずれも優れたゲームの開発者ないし、プログラマーの 経験を持つ。宮本氏もそうだが、社長の岩田氏はマザーのエピソードで知られるように優れたプログラミング能力を誇っていたようだ。シャープの電卓用液晶か らゲームウォッチが生み出されたように、ハードウェア的な制約がある中で、最も面白いソフトウェアを作ろうとするのが特色である。スクエアエニックスとは 実に対照的である。

 ファミコンのマリオやドラゴンクエストは容量の制限が厳しく、使い回しを余儀なくされたようだ。現在ではあれは美談 なのだが、10人中8人は「こんな環境じゃ仕事が出来ない」とハード構成を変えて、ファミコンのパワーアップを要求するだろう。(実際ファミコン後期では ROM内蔵等でこの手の問題に対応したソフトが出ている)

 SONYはこの手の職人技がソフトウェアより、まずハードウェアに出るので、 PS3の内部構造は賞賛された。(家電的な意味で。)ただ、いつも配線は見事で部品は豪華だが、メモリー容量をケチるという本末転倒ぶりを発揮しソフトウ エア職人を苦しめることになる。が、それはまた別の話。

 任天堂はハード屋ではないので、3DSの規格策定にあたっては「最低限これくら い動いてくれればSONYに対抗できる」と考えた筈だ。ハードに対する要求は最低限にして、後はソフトウェアで対抗するという発想である。実際、任天堂の ゲームはDSでもNGPに対抗可能なレベルだと思うので、その発想はあながち間違いではない。任天堂はどこのゲーム開発会社よりもソフトウェア志向だと考 えてしまっていい。ハード屋のSONYとは全く別種の発想をする。ハードに関しては、かなりセコい。

 「今回、3DSのライバルはゲーム 機だけではない」と任天堂の幹部が発表したと伝えられているが、それはNGPに対する悔し紛れの発言ではなくて、彼らの本音だと思う。DSの牙城を脅かし たのはPSPではなく、DS自身の問題点と、スマートフォンの躍進があると私は思う。

 スマートフォンの何が問題なのかと言えば、性能と 普及が急拡大していることに問題がある。しかも恐ろしいことにDSの性能とスマートフォンの性能は被る。2画面以外の、無線LAN、タッチパネル、処理速 度といった点では既に互角か抜かれている。液晶にしたところで、スマートフォンの方が高解像度なら2画面に拘る必要もない。しかもスマートフォンはその本 質から常時接続が可能で、ゲームのDL配信も当然のように行う。しかも進化の速度が急なので、1~2年で性能面で大差をつけられる可能性が高い。OS越し にゲームを走らせるスマートフォンと、OSを経由せずにゲームを走らせるDSでは同じハード性能ならDSの方が有利だろうが、スマートフォンのハード性能 は既にDSを起き去りにしつつある情勢だった。

 DSにもスマートフォンへの優位性はあった。(マジコンを別にすれば)操作系である。が、それはPSPと何ら変わりなく、アナログスティックがない分、不利であった。スマートフォンに対抗しようとして、ライバルを持ち上げても仕方がない。

  この時期の象徴的な出来事として、iPhoneやiPadの躍進がある。世界的に低価格ゲームはスマートフォンの牙城となりつつあった。しかも、 iPhoneはDSの時代を象徴するソフトである「ラブプラス」を出してきた。任天堂や大半のユーザーにとって「ラブプラス」はそこまで拘るソフトではな かっただろうが、DSより綺麗で安価なソフトウェア提供がなされ、特にDSからの移植によるデメリットが表面に出てこないのは驚天動地の大事件だったに違 いない。しかも移植がスムーズな早さだったので、第二第三のラブプラスが出ても不思議ではないと警戒したはずだ。ラブプラスは社会現象にまでなった一方 で、かなりニッチな大人向けゲームなので、子供向け市場の雄である任天堂DSを脅かしたとは云えないが、iPhoneをゲーム市場として内外に強く認識さ せるきっかけとなった。

 任天堂はイニシアティブを取らなければ、スマートフォンでのゲーム機コンソールにサードをさらわれる危機に直面 した。DSはマジコンによるソフトウェア被害もあって、中堅的なソフトウェアが売れない市場となっていた。勝ち組ハードDS自身の問題点の大きな部分は、 性能不足とマジコン被害で、その2大弱点が解消された新しいデバイスがスマートフォンだった。しかもゲーム機と異なるジャンルのスマートフォンは急速にそ の数を伸ばした。DSでソフトを開発する唯一無二のメリットはDSの普及台数で、ヒットすればでかい市場だったことが大きい。しかし潜在ユーザー数では世界に羽ばたくスマートフォンの方がDSをその展開速度で圧倒していた。DSの得意とする昔ながらの2次元ゲームの開発は、スマートフォンに完全移行しても不思議ではなかっただろう。サードパーティーの開発会社は、任天堂が対策に動かなければ新天地スマートフォンに向かってしまうかもしれない。

 ここに来てDSに胡座をかきたかった任天堂も動 かざるを得なくなった。命題となったのは(3DSの仕様から逆算するに)、旧世代機になるであろうPSPに勝るハード性能、アナログスティックの装備、 DS互換、2画面&タッチパネル維持、カメラ、スマートフォンで採用不可能な新たな付加価値=3D表示、となる。DL配信、マジコン対策も命題としてあったはずだ が、その点についてはまだ見えないので割愛する。

 少なくとも任天堂はSONYがPS3の逆ざややPSPgoで体力を削り、新型ゲーム機 を投入しないか、情報を掴んでいてもXperiaPlayの開発までで、アンドロイドでのゲーム配信ビジネス位までしか予測していなかったようだ。(それ すら予想してなかったようにも思えるが)SONYの次世代PSPが高機能であれば有るほど、ゲーム開発に障害ありとして切り捨てていたのかもしれない。少 なくとも、既知の敵SONYは任天堂にとって恐ろしくない存在として嘗められた可能性が高い。

 3DSは上記の理由で生み出されたので、ローンチと呼ばれる本体同時発売ソフトは有力サードに配慮した内容になった。SONY陣営と言うよりは、スマートフォン陣営に開発会社が流れないようにする為である。結果、見事に任天堂以外売れないラインナップになりつつある。

  勝ち組ハードはフルモデルチェンジの必要がない。ワンダースワンカラーとゲームボーイアドバンスの戦いはちっぽけな戦場だったかもしれないが、アドバンス は市場で圧勝した。DS登場まで長くアドバンスシリーズの時代が続くことになる。といっても3年半程。DSは2005年頭始動としても丸5年は経過した。 この5年は長いが、この時期に停滞をしていたものは世界的にも多数見られるし、ゲーム機ビジネスの立ち上げと収益化迄は従来より長期間化していたので、長 いようで短いと言うことは出来る。本体のマイナーチェンジも延命の理由となった。

 ただし5年間ゲーム機市場は足踏みをしていたかもしれ ないが、スマートフォン市場は誕生から躍進までを遂げた。この事が、任天堂が次に進む決心を固めた最大の理由である。NGPについては恐らく完全には予測 できていなかったので、3DSの戦略が今後破綻する可能性はある。巷では3Dブームがすっかり去っているが、3DSでブームを再現できるかどうかが一つの 試金石になるに違いない。

 私は3DSを買ってしまったし、そのことを別段後悔してないが、3DSは任天堂が思うほどの成功を収めてくれるか微妙な雲行きになりつつある。しかし任天堂はマイナーなときの方が良い仕事をするし、ニンテンド64は名機だった。3DSでは、ニンテンド64的な良さが期待できるかどうかは分からないが、任天堂自身が強くニンテンド64との関連を意識してそうなので、期待できるかもしれない。

2011年2月12日土曜日

マジコンの果たした役割

 私はDSユーザーはDSに満足していないと書いた。DSは広く安物であると認められたが故に勝利したので、DSが性能的にチープであることを消費者は心理的に否定することは出来ない。

 安い方を買ったんだから当然でしょ、となる訳だ。となると、価格と、性能以外で顧客を満足させる必要がDSにはあった。豊富なソフトウェアラインナップというのは確かに魅力だが、DSの顧客層は「安さ」を主軸に商品を選んでいる人たちなので、実はソフトウェアラインナップの豊富さはさして重要ではない。むしろ値段が重要だったとみている。いかに安くゲームをするか。そこに適合するのがマジコンだった。

 捕捉すれば、DSを買った人は貧乏人だと思っているわけではない。家計からゲームにかける適正コストを知っている堅実な常識人の集団だったと思う。PSPやPS3を初期出荷で購入する層は、むしろ常識人と言うよりは道楽者の範疇だろう。(ちなみに私は道楽者に分類される。)

 問題なのは、従来はこの手のゲームハードウェア競争に常識人が参入するのはもっと後、道楽者による吟味を経てシェアが確定してからだったのだけれど、今世代機では情報が出回る環境が整っていたのか、長く続く太平の時代に人々が飽き飽きしていたのか、発売直後から人々がゲーム機に殺到するちょっと珍しい現象が起きた。だから勝ち負けが明確化する前に混戦が続くという、消費者やメーカーにとって美味しいのか美味しくないのかよく分からない事になった。三国志の盛り上がりのようなものだ。ま、いかにゲームの世代交代が遅れたかということかもしれない。

 なんどもいうがDSの購入層が重視したのは価格だ。総予算3万円で、DSとPSPのどちらを買う方が満足できるかという指標だったと言い換えてもいい。PSPはSONYの対抗策により、その指標でジワジワとDSに迫り、追い抜いた。PSPの発売当初の価格は19800円であるが、実際はバリューパックの26000円の価格の方がトータル価格として認識されていた。ソフトを1本足すと3万を超える高額商品だった。現在の定価は16800円である。DSの発売当初の価格は15000円で、3万の予算でソフトを3本くらいは買える計算になる。現在の最上位機種であるLLは18000円だ。先に述べた指標での満足度は、DS有利にスタートしても、SONYが怒濤の追い上げを見せている。ひいき目に見ても、DSとPSPで同予算なら購入可能ソフト数に大差はなく、性能差が如実に出る。

 ゲームソフトの非合法利用は古くはSFCやPC98の時代からあって、PCでのエミュレーター以外にも、実機で動くバックアップツールは長い歴史を誇っている。ただ任天堂は、FC,SFC時代は兎も角、バックアップツールの進化したPS、PS2時代はマイナーゲームのメーカーだったし、ROMでソフトを提供したので、違法コピーについての対策は甘かった。ROMなら大丈夫と考えていた節がある。後は違法ツールの販売店を虱潰しに潰せば対策は完了と考えていただろう。PSPやPS3で王者SONYがかなり熱心に違法対策してきたことと対照的で、この点が初期の本体価格にも影響しただろう。

 ところがDSの市場は急拡大した上に、ハードウェアの対策は甘く、しかもその全盛時代は長く続いた。しかもDSのユーザー層は、質は求めない代わり、価格と量にうるさい顧客層だったのである。大量のソフトを無料でプレイできるマジコンの存在が知れ渡るや、一気に普及してしまった。国内だけならマジコン生産工場対策を出来たかもしれないが、海外で生産され持ち込まれるマジコン対策には遅れた、というより動けなかった。DSの真の出荷数1位の周辺機器はマジコンで間違いないと思われる。

 マジコンが普及したのは、善悪を超越した歴史的事実である。あれは法律上間違っていたと観念論を述べたところで歴史は変わらない。マジコン阻止に失敗し、無料でゲームが出来るという概念を広く大衆に認知させてしまった任天堂の罪は限りなく重い。しかもその風潮に乗って、グリーやモバゲーといった携帯電話のゲーム提供会社が「無料です」のTVCMを展開したあたり、「ゲームは無料で当然」という消費者の誤った認識を助長する事となった。PSPにも違法ツールは存在するが、こちらの方が敷居はやや高かったし、SONYの対策は被害拡大に一定の効果を収めた。任天堂は否定するだろうが、任天堂の罪はSONYより遙かに重い。

 DSは、罪を背負って売り出された。性能はチープだけどPSPより安くて面白いです、という罪だ。罪と言うよりは、愛すべき嘘と言うべきかもしれないし、嘘ですらないかもしれない。消費者は、任天堂の嘘に知ってて乗っかった。発売当初は安かったからである。が、安いだけでは満足できないし、ソフトの魅力が重要となる。DSにもPSPに対抗する優れたソフトは多数生まれた。ソフトの出来だけならDSの方が勝ってたかもしれないが、ハードと組み合わせると差は歴然としていた。しかもPSPはゲームアーカイブスによって安価なソフト提供も可能になった。任天堂のソフトがPSPの半額だったら誰も不満は抱かなかったろうが、実際は似た価格帯だった。

 消費者は任天堂の嘘に乗っかっていたが、不満は募る。本体は安くても、ソフトの価格差はない。安い方を買ったのに、これはおかしい。本体も値上がる。そこは消費者のあてが外れたと言うべきだが、その不満が、マジコンの登場により一気に解消されることになった。驚異のソフトウェア無料の世界である。しかも消費者は任天堂の罪を知りつつ乗っかっていた。割り切れない思いを抱いていたと言ってもいい。端的に言えば「売れてるんだから、もっと安くしてよ」だ。マジコンは違法な商品だが、任天堂に騙されたと思っているユーザー層に躊躇いはなかった。罪を罪で帳消しにする感覚と言っていい。本体を買ってあげたんだし性能で劣るんだから、無料でソフトくらいやらせなさいよ、という恐るべき主張の飛躍がそこにあった。論理ではなく感情である。

 任天堂も、性能差を知りつつDSを売り込んだ阿漕な商売をしている自覚もあった。これだけ普及して、マジコンは違法ですCMを打つと逆宣伝になるという逆効果も考えられたし、なにより消費者からの反発や叱責が予想された。ソフトの減速は痛手だが、本体販売数は伸びて任天堂としての儲けが確保できていたのも大きいだろう。本体も値下げどころか値上げしたので逆ざやにならず、利益は確保してある。裏から手を回しマジコン対策に試行錯誤を繰り返したが、ほとんど効果が上がらないままDSの時代は終わることになる。

 DSが売れたそもそもの理由はマジコンとは無関係だ。マジコンがあったからDSが売れたのではなく、DSが売れたからマジコンが登場したのである。しかしながら、マジコンの存在が社会現象としてのDSを加速させたのは間違いない。失速しかけたところに、意外なところから再加速させられたというのが任天堂の正直な感想だろう。

 DSのブームを恐らく任天堂は予測していなかった。社会現象だから無理もないが、狙って再び起こせることではない。グリーやモバゲーの例で言えば、任天堂こそ3DSに3Gを搭載して「ソフトは無料です」の広告を打つべきだった。全てのソフトをDL可能にして、ユーザーからは月額固定費を徴収する。そうすれば別の世界が展開したかもしれない。ポケモンやゼルダやマリオの新作が出るなら、その戦略もアリだったかもしれない。今の消費者はゲームが無料でないとなかなか首を縦に振らないだろう。私はそんな世界を見たくはないが。

 しかし任天堂は当然ながらそこまで突き抜ける覚悟はなかったし、必要もなかった。3DSではDS、マジコン、GREE&モバゲーと連鎖した波が断ち切られる事になる。それは任天堂と消費者にとって幸福となるのか不幸となるのか、それはまだ何とも云えない。

2011年2月11日金曜日

安くて良い物とは何か

 今日は、なぜDSが勝利したか。DS&Wii陣営が、PSP&PS3陣営に販売数で勝利したか考えてみたい。

 私の結論はシンプルだ。安かったからだ。

 PSPとDSを並べる。どちらが安いか一目瞭然である。絶対的な指標でなく、相対的な指標であるのがミソである。比べる対象がなければ、DSがここまで売れたかどうかは分からない。DSはPSPと比べて安かったから売れたのだ。

 DS発売の時代は、日本が不景気で円高ですらなく、ユニクロや100円ショップが持て囃され、業績を伸ばしていた時代なのを忘れてはいけない。しかもその頃は、日本の景気低迷は続いていたが、世界景気はこれから絶好調へとさしかかるような上向きの時期で、日本との格差が拡大しつつあった。

 そんな中、高価なゲーム機とそれより安価なゲーム機が出た。WiiとPS3の対比でも、DSとPSPの対比でもかまわない。どうせソフトでもお金を使うんだから、安い方を買っておきましょう、となったのが最大の理由ではないかと思う。欲しがりません勝つまでは、の心境に近い。遊興費をばっさり切断は出来ないが、安い方で我慢しておきなさい、という心情か。子供としても新ハードに興味はあるから、買ってもらえる方で我慢するという選択は成立する。

 DSの付加価値というものは、実際のところ自他を説得する後付けの理由だったのではないか。ゲームの老舗の任天堂が、安くても面白い物が作れるといってる、ここはそっちに乗っておこう。というのが最大の購入動機だと思う。面白くなかったら任天堂に責任を取って貰うつもりで、消費者は性能差を知りつつも騙されたのである。

 「枯れた技術の水平思考」という言葉が広く世間に認知されたのもこの頃で、ワンダースワンは売れなかったがDSは売れることになった。コストをかけなくても工夫とアイディアで面白くする、という、これは一種の精神論に近いと私は思うのだけれど、これが日本人の心の琴線に触れ、時代の空気にもマッチしていた。

 DSはPSPと比較されることで売れたと書いたが、WiiもPS3と比較されることで売れた。これは相乗効果だった可能性が高い。大衆にとっての善玉はWiiでありDSであり、悪玉は金持ち相手の商売をするPS3やPSPだった訳だ。2chに「俺らはPS3はコケると思うよ」というスレッドが長寿命を誇ったのも、この辺の善玉・悪玉という認識のされ方が大きく影響している。

 (完璧に余談だが、現在でもこの空気は残っていて、会社の業績が芳しくなくても現場が知恵と気合いで乗り越えろ、なんてビジネス論がまかり通っていたりする。第二次世界大戦の頃だと、補給を重視しないで作戦行動をしたり、軍事物資の欠乏を精神論で乗り越えさせ等とするアレに通じる物がある。

 日本人の現場の努力で解決する点は美徳だと思うけれど、第二次大戦の敗北のように深刻な失敗に繋がることが多いのは否定できない。)

 じゃあ、任天堂が消費者に約束したこと。これは本当に達成されたのだろうか?

 達成されたかについては、個々人の感想にゆだねるほか無い。DSもWiiも終わっていないと考えるとその点に対する評価はこれから下される筈だ。私としてはマジコンを込みで考えれば消費者としては満足、マジコンがないものとして考えればユーザーは満足していないと考えている。少なくとも3DSでなく、DSへのソフトウェア開発にまだ注力するべきと考えているように思えてならない。新しいソフトや新しいハード(3DS)を欲しがるようなユーザーはDSの主要な顧客層ではない。

 任天堂はDSにおいてライト層の取り込みとか、新しい体験の開拓に挑戦したとか言われている。これらはつまり任天堂のDS事業の光の側面なのだが、これからDSから3DSに開発がシフトするにつれ、負の遺産というべき影の側面が浮き彫りになってくるのではないかと推測している。

悪貨は良貨を駆逐するのか?

 NGPと3DSという次世代携帯機が出そろうことで、現行PSPとDSは正式に旧世代機になった。どちらが勝者であったかを含め、これからその存在意義が決定されていくことになる。つまり、歴史にPSPもDSも足を踏み入れた。特に3DSの発売が迫ったDSは正式に旧世代機化することになる。

 で、ここでは乱暴だが、PSPとDSについて善し悪しを述べていきたい。独断と偏見に満ちているのは承知の上である。

 改めて述べるまでもなく、DSとPSPの性能のどちらが上であったかは明らかだ。PSPである。2画面や、タッチパネル操作、互換機能、すれ違い通信などは任天堂の「価値の付加」であって性能ではない。バッテリー駆動時間は純粋に仕様で勝っている点かもしれないが、これも性能とトレードオフの面があり、処理速度や映像表現といった点ではやはりPSPに軍配が上がる。純粋な性能では勝てないから、多様な価値を付加して遊びの幅を追求したのがWiiやDSの基本戦略であり、「いや、DSは性能で勝っていた」と主張するのは強引に過ぎるだろう。

 が、その一方で市場シェアでの勝利はDSが手にした。これは日本の主要な消費者層が、任天堂により付加された価値を、性能差以上に評価したことによる。素人目には性能差はわかりにくいが、付加された価値については理解が容易だったのかもしれないといえる。これは、実際にはゲームをしない子供の親が子供に買い与えるゲーム機を判断するにあたって大きく影響するだろう。

 DSはPS2を抜き、日本で最も売れたゲーム機になった。マリオ、ドラゴンクエスト、ポケモン、ラブプラス、DSで大成功を収めたソフトも多い。DSは、性能で勝るPSP相手に販売数で大成功を収めた。

 ハードの性能はゲーム機としての成否に関係ないと結論づけるのは容易い。ただ、私はそれは嘘だと思う。

 DSとPSPとの間に生じた競争とその経緯は今後、様々な角度で論じられていくだろう。ただ、DSのシェアは私に言わせれば消費者による間違った選択の結果なのである。

 私は単純にハードウェアの性能でPSPが優位だからPSPを買うべきだったといっているのではない。ゲーム機の優劣はそれで何が出来るかの総合力なのは間違いない。それでもなお、消費者は誤った行動の結果、DSのシェアを押し上げ、本来の性能とは比例しない、いびつなシェアを任天堂が築き上げるのに手を貸したと主張したい。それはつまり任天堂と同じ戦略をとれば、どんな分野でも、「性能で劣る側が勝利を収める」ことは再現しうるのである。運の要素は強いだろうけれど、それでもある程度のところまでは行くだろう。

 ただし、私は詐術とも書いた。つまりDSの実力は上げ底された物であり、その詐術がばれれば自然に実力は元のバランスに補正されていく。次世代機が全く出ない状況で、PSPとDSを販売し続ければ、マジコンといった要素を排除できればだが、PSPのシェアはDSに対して逆転をしても何ら不思議ではない。実際、2010年末~2011年頭はPSPの本体不足という現実を招き、それは未だ解消されていない。

 現実として、DSとPSPの今後をずっと検証することは不可能なので、次世代機が出れば、DSとPSPの争いはDSの勝利と歴史に記される。

 私は消費者の誤った選択と書いた。これは、なぜ誤った選択なのだろう?DSは成功だ、ドラクエ、マリオ、ラブプラス、ポケモンが出たじゃないかと言われるかもしれない。

 因果関係が逆である。消費者が良しとしたから、DSの時代が長く続き、ドラクエ、マリオ、ラブプラス、ポケモンがDSで出たのだ。マリオ、ポケモンといった任天堂のゲームは、PSPだと絶対に出ないだろうというご指摘にはその通りだと申し上げる他ないが、DSが大コケすれば、DS2というべきDSの後継ハードが既に発売され、上記のソフトが既に投入されていても何ら不思議ではないと指摘したい。

 私の主張は、PSPは勝利し、DSは駆逐され、任天堂は新ハードをもっと速く投入して対抗するのが自然な成り行きだったのに、マーケティングの勝利により、任天堂の世代交代は遅れた、というものだ。

 逆の立場から見てみよう。過去の負けハードの歴史を見て、敗れたハードはじり貧に陥り、早々に市場から消える。もしくは子供などの特定層にアピールして凌ぐしか無くなる。サターンとドリームキャストの関係が好例だろう。

 DSが真の勝利者だとしたら、そのシェア数での決着がついたのはとうの昔で、とっくにPSPは販売中止していなくてはおかしい。現在のように本体が品切れになるという事態が起こることはない筈である。勝者であるDSの後継ハードが先に発売され、敗者であるPSPが旧世代ハードでそれを迎え撃つ事態など考えられない。いや、AMDとIntelのCPUのような事例もある。勝者が敗者に先んじて新製品を投入すること自体は珍しくない。しかし、敗者の製品が絶賛売り切れ中な事までは説明がつかない。DSは,PSP以上に性能が不足し、任天堂もその点は強く認識しているのだ。

 DSは勝者とされている。だが、その勝利は販売数で裏付けされているものの、それ以外の要素では証明が難しい。まぐれで勝ったといってもいい。いかに任天堂のマーケティング戦略が成功してしまったかだが、このことは任天堂を苦境に陥れる可能性がある。

 任天堂は今後、勝利を期待されることになるが、勝つために常道と云えることは高性能なハードを安価に提供することである。3DSとNGPの関係性は、公平に見てもDSとPSPの性能差の再現に近い。3Dといった付加価値を除いて、3DSがNGPに性能で勝る事はないだろう。つまり実力以外の要素で任天堂は勝たなくてはならなくなった。価格に関しては不明だが、25000円という本体価格は、Wii以上の値段で任天堂としては強気の価格設定と云える。

 3DSで、任天堂がDSの再現を行うことは極めて難しい。それは既存のDSユーザーの満足度がどの程度かに影響するからである。DSのユーザーの大半は、DSの性能をこれで良しと判断した層である。そして、勝利したハードは買い換えを必要としないというこれまでの経験則を重視している。

 つまりDSは勝ちハードであるが故に購入されたのであり、既存ユーザーには、勝ちハードであるが故に負けハードより長く使用可能でなければならず、破損するまで買い換えなど不要と考え、ゲームの性能差には拘らない消費層なのだ。しかもPSPを購入したような性能差を重視する層には、NGPというより高性能なハードが出てしまった以上、訴求力が弱まってしまった。

 私はDSを勝ちハードと考えていないが、DSを勝ちハードとしてしがみつく層はかなり厚いと考えている。しかもそういう層に3DSが売れる可能性については、かなり否定的に見ている。私はDS購入層とは違った判断の下に3DSを購入したけれど、DSユーザーの大半は3DSに簡単に移行しないだろう。むしろ、売り手の心理とは裏腹に、DSで十分と考え、ソフトを要求し続ける可能性が高い。

 3DSについては、DSが成功したが故の逆風という記事が今後登場するのではないかと予測している。が、DSは社会現象であって、勝ちハードではなかったととらえるのが正解ではないか。そして、社会現象は狙うことは出来るが再現することは難しい。

 価格という要素がある以上、NGPが勝ちハードになるかは何とも云えない。3DSにもチャンスはある。しかしながら、3DSにはDSという負の遺産が存在するのではないかと思えてならない。3DSでDS以上にソフトが売れるか? それを任天堂自らが証明しない限り、先はないのではないかと考えている。

2011年2月10日木曜日

集英社のiPadアプリ

 集英社のiPadアプリが登場した模様。「2011年1月6日発売号が115円で販売されて」いるらしい。500円のものが115円なのでお手軽感は強い。ジャンプ本誌ではない為、2軍なのか3軍なのか集英社的な位置づけは不明だが、大きくかじを切ったことは評価したい。おそらく書店に廻る数も多くない雑誌で、書店での売れ行きの減速の程度と、アプリでの収益を両天秤にかけて今後とるべき戦略の参考にするのだろう。

 大手出版社として積極的で、かつ、手堅い戦略だと思う。まず、AppleのiPadで出してきたのも好印象だ。このブログでは、分析という名のもとに勝手放題色々書いてみたい。

 今回の集英社の戦略はアリだと思うのだが、戦略が色々みてとれる。

1)書店での販売数の限られる雑誌のアプリ販売
2)2~3軍的位置づけの雑誌のアプリ化による受け皿の多様化
3)リリースタイミングのズレによる雑誌の優位性確保
4)低価格と入手性によるアプリ版の利便性確保
5)収益構造の多様化
6)コストの削減(バックナンバー管理や在庫減)
7)ジャンプ本誌の電脳化にあたっての交渉材料の確保
8)漫画のWEB配信は、コミックより雑誌が主流の時代へ


1)書店での販売数の限られる雑誌のアプリ販売

 1)については、現在の漫画雑誌数が多い少ないの話があるのだが、
書店に物理的展示スペースには限界があるわけで、書店の倉庫にも限界がある。
Amazonの数ある成功理由の一つは、ロングテール、ニッチな商品を
多数取り揃えている事だと言われているが、現在の書店ではその真逆で、
なかなかニッチな商品は置かれない。置かれても数は出ない。
結果として、ベストセラーだけが並ぶ代わり映えしない店が多くなる。

 買いに来ても(売り切れや未入荷で)買えなかったという機会損失は
発生している筈なので、その機会損失が低減するだけでも効果はある。
コミック(単行本)は取り寄せで購入する価値はあるが、月刊誌は
余程熱心な読者でなければその可能性は低い。この為、雑誌のほうが、
この種の問題が発生している。アプリ化は、上記の問題の回答になり得る。

書店の側にたっても、おそらく主力の商品ではない筈なので、ある程度整理
される方が望ましい。各社アプリで競争してもらって、人気がある月刊誌だけ
大量に店頭に並べる方が、書店としても出版社としても損をしない所だと思う。

そういう意味で、今回はクレバーなやり方だ。


2)2~3軍的位置づけの雑誌のアプリ化による受け皿の多様化

 2)は1)の延長線にあるのだが、バクマン。なんかでも語られているように
2軍3軍的な位置づけの雑誌は重要なのである。そして漫画はやはり、
読者に読まれてこそ真価がわかるので、発表の場がいる。

しかし売れない雑誌を刊行してもコスト増で廃刊になってしまうだけだし
肝心の売れ行きが伸び悩む。おそらく出版コストについては赤字でなければ
問題なく、収益は人気作の単行本化で賄っているのではないかと思う。

ややこしいのは、雑誌で連載してコミック化して、コミックが売れれば儲かる図式だ。

雑誌は出版して広く世間に認知されねばならないが、それだけでは儲からない。
繰り返すが、雑誌は単に雑誌を売るだけではさして儲からないはずだ。
特に発行部数の限られる雑誌の存在理由は、連剤コミックの販売による収益が主だろう。

連載する場を維持しつつ、コミック化につなげるために、アプリで補完する方が、
雑誌単体での収益も読者数も稼げると判断したはずだ。
ちなみに月刊であっても連載させる方が、忘れ去られず、
その作品の人気を維持させる効果があるんだと思う、推測だが。

月刊誌は読んでいるけれど捨てて、好きな作品のコミックを買う層。
そのようなファン読者層の新規開拓と拡大を狙っているのだろうと思う。
月刊誌自体漫画の詰め合わせで、その中からほしい漫画を
チョイスしてもらうという性質があるので、安ければ
そういうコミックを買ってくれる読者層の開拓に繋がる。

2~3軍の漫画は王道というよりは、ブレイクする可能性を秘めているが
どちらかといえばニッチな人気を誇る漫画だろうし、そういうニッチな需要は
前述の通りWEBの網羅性と親和性が高い。


3)リリースタイミングのズレによる雑誌の優位性確保

 3)については、書店対策という意味合いがまず大きい。
SONYのようにDL配信化を一気に進めて小売の反感を買っても意味はない。
現物があること、付録が付けられることなど、書店販売の雑誌の価値は高いが、
時間的な優位性を付け加えることで、その差を明確にした。

書店にしてみれば今までと何も変わらない対応でいいので楽でもある。
しかしこれは次に書く、4)の伏線でもある。

余談だがSONYというのは本当に日本企業にはありえないくらい革新的で
垣根を超えていく会社で、よく失敗も挫折もするが、その失敗から得られる教訓は
とてつもなくデカイ会社である。自己分析できず、漁夫の利を得させてしまうのが気の毒だけれど。


4)低価格と入手性によるアプリ版の利便性確保

 4)については3)と連動するが、単純に考えれば書店で買うほうがいい。
ヘビーユーザーならスキャンもできるし、カラーは印刷ページのほうがきれいで、
月刊誌はそもそも紙質が週刊誌より優れている場合も多い。
(今回のジャンプスクエアの紙質については知らないが。)
オマケが付いてる場合もあると思う。

私は送ったことがないが、アンケートハガキは重要らしいし。
アンケート機能がつくかどうかは不明だが、
アプリにつけばそれはそれで面白い。

ともあれ、価格が同じなら現物を買うのだ。
そして、中身で差別化しようとすると書店(小売)を敵にまわす。
だから、価格を下げて広く浅く売れるようにした上で、
リリースタイミングを遅らせることで書店の優位性を明確にした。

あくまでも新規層の開拓が目標ということを自他共に明確にしたので、
読者にも書店にも鮮明に打ち出せた素晴らしい戦略だと思う。


5)収益構造の多様化

 5)については、正直やってみないとわからない部分はあるのだと思う。
ただ多様化について言えば、こんな喩えができるとおもう。

 現在は、サラリーマンとして会社からの収入で食っている状態であると。
会社が順調ならそれで何の不満もないが、日本の景気も悪く、
業界的にも会社の大幅な成長は見込めないし、業績も悪い。
一生この業界で食っていくのは大変そうだし、貧乏な思いも
理不尽な思いも味わいそうである。今の生活を維持するのも厳しい。

そこで副業を始めることにした。もちろん当たるかどうか分からないし、
どの程度の収入になるか皆目見当がつかない。
しかし会社の収入は残業規制もあって、毎月ほぼ変わらない。
1万でも2万でも追加の収入があれば、家計は大いに助かる。

それにこの副業は、発展性が見込め、うまくいけば本業以上の
収入になる上に、広く世界に開かれた仕事である。本業である
会社を刺激しないやり方で始めれば、最初は乏しい副業の収入も
本業以上に伸びてくれるかもしれない。

うまくいけば年収2倍だし、本業がこけても悠々生活ができる、と。

多様化というのは、多分そういう発想だ。後、喩えが悪かったかもしれないが、
集英社にとっては本業はあくまでも漫画雑誌を作ることなので、書店で売ろうが
WEBで売ろうが本業をおそろそかにすることにはならない。
その点では不適切な喩えだったかもしれない。


6)コストの削減(バックナンバー管理や在庫減)

 月刊誌のバックナンバーや追加オーダーがどの程度か全く知識はないが、
在庫管理は楽になるだろう。住み分けによる最適化がなされるはずだ。
現実問題としては、iPadのアプリなので、非Appleユーザーは恩恵に預かれず
限定的な効果にとどまってしまうかもしれないが、アプリ化の恩恵は
将来的にはこういう所に及ぶ。


7)ジャンプ本誌の電脳化にあたっての交渉材料の確保

 7)についてはデータ収集といえば分かりやすい。Appleへのマージンがいくらかも分からないし
価格の決定権についても、どちらがどれだけ口を出したのかは不明だ。
売れ行きについても、購買層の年代についても、一切合財が暗中模索だろう。

しかしながら、1年も経てば情報は出揃う。これは週刊少年ジャンプないし
他のコンテンツを電子書籍として提供する場合の判断材料になる上に
交渉材料にも成り得る。

週刊少年ジャンプについていえば、Apple陣営での提供に限らない。
Amazonのキンドルも当然選択肢に入るし、SONYの電子書籍サービスもある。
私はPSP2ともいえるNGPは電子書籍サービスを投入するのは
必至だと考えてて、その為の3Gや有機EL、スマートフォン機能だと思う。
また、Androidが成熟すればAndroidに電子書籍マーケットが形成されるかもしれないし、
日本独自の規格を、それこそ集英社等の出版社が中心となってスタートするかもしれない。

数ある選択肢の中で、最も魅力的で有利なオファーを獲得するために
情報を収集し、相手に示す自前のデータは必要なはずだ。
少年ジャンプの電子書籍としての価値は説明する必要もないが、
ファイナルアンタジー7の存在で、プレイステーションの勝利が確定したのと
同じくらいのインパクトがあると考えて良いだろう。

集英社自身もその事が分かっている為に、打てる手をビシバシと打ってきている。


8)漫画のWEB配信は、コミックより雑誌が主流の時代へ

 2)の内容と被るのだが、電子書籍はコミックより雑誌のほうが親和性が高いのだろう。
コミックの電子書籍は今までもあったが、コミックを買うのと同額が割高になる傾向がある。
結果として、あまり普及していない。自炊よりメリットがある電子書籍販売は少ない。

が、雑誌について言えば、コミック販売に対する販促的なツールである上に
発行量が莫大であるがゆえに、発行元への負担も凄まじい。
ジャンプの紙質の悪さは有名だが、あれは立派な企業努力であって
いかに安く提供するかが雑誌というものの使命である。

そして雑誌は発行部数が増えれば増えるほど管理の難しさや手間がかかるが、
電子書籍は(サーバーや回線への不可を別とすれば)コストの増大はさほどでもない。
100万冊の週刊誌を保管する倉庫となると巨大で、物流のコストと時間ロスはかなりのものだが、
100万人に電子書籍を配信するサーバーと回線は、巨大ではあるだろうけれど、
コスト的には倉庫&物流より安価で、管理しやすい可能性が高い。
エコという観点もそうだが、時間的ロスは少なくなる可能性がある。
ジャンプが数日遅れで発売される地域は、珍しくない。

 ジャンプ本誌なら、苦労してでも日本全国に流通させるメリットはあるが、
月刊誌では、そのメリットは薄い。集英社としては、月刊誌の意義は認めつつも、
その発行がもたらす負担を軽減させる措置を模索しても不思議はない。

 ただ、大多数の既存読者は電子書籍は選ばないので、影響は限定的かもしれないし、
あくまでも電子書籍は副業的な立ち位置だろう。ただ、今回の試みがうまくいって市場が形成されれば、廃刊が取り沙汰される雑誌の場合、電子書籍化で生き残れる可能性が出てくる。

 大手出版社の集英社が先鞭をつけることで、あとに続く中小出版社が動きやすくなるのは間違いない。


 以上、電子書籍の大きなニュースなので勝手に書いてみた。至らぬところ、書き足りないところは多々あるかもしれないが、こう言うニュースは日々移り変わる情勢の中で人の意識も変化するので、その都度その都度、まとめて置かなければならないものではないかと思う。

 今回の集英社の試みは、電子書籍配信各社を天秤にかける行為に思える。いずれ少年ジャンプが電子書籍化される時代がくるのだとしたら、楽しみで仕方がない。

2011年2月9日水曜日

iPhone3GS

たまたま、iPhone3GS購入者と話をした。
話をしてわかったこと。

・iPhoneってなんかすごいね、で買ってる
・iPhoneは最初使ってよく分からずやめた、でしまってある
・iPhone3GSの料金プランはフラットのまま
・iPhoneとかAndroidとかどうやって使うの? と定石を逆に聞かれる
・ゲームとか特にしないし、探したりもしない。
・iPhone4が欲しいと思ってる
・自宅は最近までSOFTBANKの電波が入らなかった

私より年配の方で収入も上で、夫婦共有のおもちゃとして買ったみたい。
たぶんこういう人が、softbankの収益に大きく貢献しているはずだ。
おそらくパケ放題フラットで4280円を支払っている(らしい)のだが、
全く使用していないらしい。
こういう買ったけど寝かせてしまった人、割合としては少なくないに違いない。

使うかもしれないから解約とか考えていない。
せめてパケ放題フラットを、パケ放題Forスマートフォンに変えるだけでも
毎月の固定費が減額できると思うのだけれど。

毎月1万くらいかかりますよね、というと、「え、高い!」というけれど
毎月5-6000円だと別に高いと思っていないみたい。
その4000円の差が良く分からない。
使っていないならどっちも無駄じゃないだろうかと思うのだけれど・・。

ネットでは情弱とそしられてしまうかもしれない。
だが、ネット以前は日本人は誰もがこんな感じでモノを買っていた。
流行もののおもちゃに飛びつく感じで言えば、
むしろ変わらないスタイルを貫いているように思える。


で、色々私のAndroid端末の使い方を説明した。

・着信音を人ごとに設定できます、音楽で人が識別できるので便利ですよ。
・Gmailを何時でもどこでも見れるので便利ですよ、お知らせもしてくれます。
・連絡先もGmail連携なので、携帯が壊れても連絡先が亡くなりません
・RSSリーダーで、WEBの登録サイトの更新状況が確認されます。PCと連動できます。

上記の理由はどれもピンと来なかったらしい。
GMAILが見れるのだけは、かろうじて・・・といった感じか。

最終的に、第三者の話が出て、
ああその人は脱獄(JB)してテザリングしてるんです、って話をした。

これには理解を示したけれど、正規の使い方ではないということも併せて説明。
詳しくない人なので、自分で脱獄もしないと思う。

初代iPhone(日本未発売)ではピンと来ず、
iPhone3Gのときになんか日本でも発売されたたしい、なにあれ、で過ごし、
iPhone3GSでわー、みんな買ってるから買ってみよう、になり、
iPhone4の情報は事前チェックをあまりしていなかった、ということなのだと思う。
でも、折角だから最新のが使いたいという熱いエネルギーを感じた。

私は、CM戦略というか、売るためのiPhoneの熱みたいなものは凄いと思うし、
現在も実質16GBの本体無料で売れ行きを拡大するiPhone4は凄いと思う。

Android端末にワンセグを搭載して売るauもやるなと思うけれど、
世界的に売れる端末を作って、訳分かんない人にも買いたいと思わせた
スティーブ・ジョブズの仕掛けはやはり凄かったんだなと思う。

プラス面というか、とてつもない勢いだけは強く感じた。
ただし、私はAndroid派だ。