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2011年12月14日水曜日

「帯をギュッとね」と「モンキーターン」

 河合克敏先生によるモンキーターン。連載中に読んでいたはずなのだけれど、内容はすっかり忘れていた。名作「帯をギュッとね」に続いて書かれてる本作について少し述べると、とにかく女の子が可愛い。「帯ギュ」も女の子が可愛い。河合漫画の特徴って女性陣のかわいらしさじゃないだろうか。

 モンキーターンヒロインは幼馴染のスミちゃんで、帯ギュのヒロインの保奈美と顔や雰囲気がよく似ている。あだち充作品でもヒロインが似ているのであれに近い。この正ヒロインは、(女性キャラとして)清く正しい優等生なので素敵だけれど、全体に見守る女の印象が強くて強烈な印象は残さない。(その分嫉妬したり、怒ると怖いタイプではある)

 しかし両作品とも裏ヒロインという存在がいて、これが強烈な存在感を発揮する。見た目のかわいらしさ、美しさ、女の子らしさもすごいのだが、河合作品の特徴は、裏ヒロインの強烈な存在感にある。

 「帯ギュ」では海老塚桜子さんが裏ヒロインと言っていい。アクティブな彼女は男女を問わず人気者でムードメーカー。他校との関係が広がっていくのも彼女の魅力によるところが多く、浜名湖高の躍進に従ってマネージャーから選手へ成長していくのがいい。彼女は本当は主人公ではないのだけれど、後半はもう一人の主人公といってよく、物語のきっかけも結末も実は彼女だったりするのだ、と私は思う。(どんな結末だったか記憶してない人は、大人買いをして読み直していただきたい)

 モンキーターンの裏ヒロインは青島さんだ。彼女は訓練所に入校するところから登場し、ラストまでその存在感を発揮する。海老塚さんが正ヒロインの友達というポジションだったのに対して、青島さんは正ヒロインが所属する陸の世界とは別の、競艇という水上の世界の住人なのである。河合先生、おそらくこの違いは分かってて設定しているのだと思うが、主人公に対して勝負させてあげられなかった(あ、書いちゃった)

 海老塚さんに対して、アプローチできる場所に「モンキーターン」の青島さんを配置してあげたのではないかという気がする。結果、彼女は主人公の波多野に告白するところまで漕ぎつける。この前後の青島さんのセリフはドキッとするものが多い。河合先生も筆が乗りに乗っていたのではないかと思うが、「今、波多野君の胸に飛び込みそうになった」と述懐する時のキュンとした気持ちがすごく伝わってくる。

 この辺りで、正ヒロインに対する邪魔者という認識が消えて、障害の多い恋路を応援する気持ちになった読者は多いはずだ。残念ながら「モンキーターン」は30巻で終わってしまい、青島さんの恋も最終巻で終わりを告げる。誤解しないでいただきたいがこの流れは作品として、けしておかしなものではない。でも、我儘を言えばもう少し恋の進展を見たかった。あんなに周囲から応援される横恋慕もちょっとないような気がする。なんの根拠も情報も持っていないが、この2又恋愛問題がこじれないように、連載が終わってしまったのかもしれないなという気さえする。でも作品としては少し最後が駆け足だったけど、ちゃんと決着がついたのは間違いない。

 とにかく河合作品は、正規のヒロインとは別に、魅力ある女性キャラがいるのは間違いない。さらに言えば、もっと脇役の女性は、もっと魅力を発揮したりするので侮れない。「帯ギュ」では重要な脇を袴田さんや別所さんが務めるし、「モンキーターン」では萩原さんや小池さんの娘の亜紀さんが魅力的で重要だ。(余談だが師匠の娘の亜紀さんは、和久井さんと結婚する予定だったんじゃないだろうか)

 最初に例に出した同じサンデー組のあだち充作品は、大体、南=みゆきタイプがのヒロインが勝つと相場が決まっているのだが、稀に例外が発生する。近年の作品はあまり読んでいないので少し古い例になるが、H2の古賀がいい例だ。彼女(の顔)は典型的なみゆき顔ヒロインなのだけれど、比呂と英雄の勝負では完全に蚊帳の外に置かれ、そのことに気づいてすらいない。H2の後半の展開というか、ラストの解釈については私は 比呂とひかりがくっつくラストだと解釈している。

 これはどうも世間一般の解釈と異なるようなのだけれど、例を一コマ一コマ取り上げていくときっと伝わるように作者は書いていると思う。でも、一気読みしないとなかなかそれに気づきにくいのかもしれない。