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2011年2月25日金曜日

追い詰められた独裁者の行方

 スイス銀行がリビアの独裁者カダフィ大佐の資産があれば凍結すると発表した。ムバラクもそうだが、近年、IT化で手の内が分かってきたのか独裁者の資産は凍結されやすい。フィリピンのイメルダ夫人の資産も凍結すればよかったのにと感じる。

 リビアの場合、反乱側がカダフィ大佐に圧倒される危険性はなくなったというだけで、まだカダフィに忠誠を誓う(契約で縛られた)傭兵が存在する。資金を断てば傭兵はいずれ離れるはずだし、石油資源も反乱軍の抑えた東部に集中しているらしい。スイスの件は、隠し財産というカダフィの補給路を絶つ狙いがあるのだろう。つまり国際的に信用される財産という点でカダフィはかなり不利になった。

 リビアでカダフィが持ちこたえている(あるいは国軍の反発を招いた)要因に傭兵の存在があったけれど、エジプトと比較すると改革がズムーズでなかった訳で、独裁者的には一定の需要があるのかもしれない。しかし国土の蹂躙ぶりを考慮すると傭兵はいかがなものかと思う。流れには逆らわないほうが結果として丸く収まる可能性が高い。

 独裁者は死ぬしかないのか、というのは大いなるテーマだ。イメルダ夫人以外の成功事例はなく、ピノチェト元大統領でさえスペインの司法当局から英国で逮捕された。あの事例は国際法や「正義」にまつわる胡散くさい事例だったと今でも思うが、結果的にイギリスは苦慮した挙句、健康状態からチリ帰国を認めた。

 カダフィは独裁者の末路は熟知しているはずで、ムバラクのその後についても「殺害された」と判断しているだろう。国外に退去しても、最終的に逮捕され、裁判にかけられると判断しているはずだ。狂犬の異名を取るだけに、全てを敵に回して徹底的に戦い抜く姿勢を見せている。

 日本の歴史小説を見ると城攻めの基本は、城兵の逃げ場をあえて残しておく事だとある。逃げ道のない敵は、背水の陣というべきで手ごわい。私の見る限り、持ちこたえたカダフィ大佐は、もう少し粘りそうに思える。リビアは、当分内戦状態が続くのかもしれない。石油の出荷を優先すると、リビアが分断統治されたり、何らかの協定が結ばれて、カダフィが延命する可能性が出てきそうに思える。リビアの反乱側が取るべきなのは、カダフィの逃げ場を確保することであって、それがない限り狂犬は噛みつきまくるだけだろう。しかし国際社会に、独裁者の逃げ場は存在しない。あえていえば、アメリカだけがそれを受け入れる土壌がある。

 リビアの件は予定されていたというより、やはり飛び火した印象が強い。リビアも既に国際経済の中に組み込まれているので、国際世論は早期解決を望んでいる。それは強者の理論、力で押さえ込んだほうが勝ちという事でもある。アメリカが調停しないと、この件は更に長引く。オバマ大統領は一連の革命に強い反応を示さないが、こういう時こそポーズでもカウボーイを気取ったほうがいいのは確かだ。それが超大国の威信というものだろう。

 アメリカの出方を見ていても、カダフィは暗殺されない限り健在なのかな、と思う。兵糧攻めは打つ手が無い時に行われるものだからだ。事態は既に政治や交渉の局面に入っているが、アメリカの姿はそこに見えない。カダフィはある意味アメリカを信頼しているはずなので、アメリカの約束以外有効と認めないだろう。リビアの国民にとっては独裁者から解放されるチャンスだった。ただ、カダフィ失脚にすんなり繋がるようには私には思えない。幾つかの材料が不足しており、このままずっと内戦状態が続くように思える。

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