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2011年2月11日金曜日

悪貨は良貨を駆逐するのか?

 NGPと3DSという次世代携帯機が出そろうことで、現行PSPとDSは正式に旧世代機になった。どちらが勝者であったかを含め、これからその存在意義が決定されていくことになる。つまり、歴史にPSPもDSも足を踏み入れた。特に3DSの発売が迫ったDSは正式に旧世代機化することになる。

 で、ここでは乱暴だが、PSPとDSについて善し悪しを述べていきたい。独断と偏見に満ちているのは承知の上である。

 改めて述べるまでもなく、DSとPSPの性能のどちらが上であったかは明らかだ。PSPである。2画面や、タッチパネル操作、互換機能、すれ違い通信などは任天堂の「価値の付加」であって性能ではない。バッテリー駆動時間は純粋に仕様で勝っている点かもしれないが、これも性能とトレードオフの面があり、処理速度や映像表現といった点ではやはりPSPに軍配が上がる。純粋な性能では勝てないから、多様な価値を付加して遊びの幅を追求したのがWiiやDSの基本戦略であり、「いや、DSは性能で勝っていた」と主張するのは強引に過ぎるだろう。

 が、その一方で市場シェアでの勝利はDSが手にした。これは日本の主要な消費者層が、任天堂により付加された価値を、性能差以上に評価したことによる。素人目には性能差はわかりにくいが、付加された価値については理解が容易だったのかもしれないといえる。これは、実際にはゲームをしない子供の親が子供に買い与えるゲーム機を判断するにあたって大きく影響するだろう。

 DSはPS2を抜き、日本で最も売れたゲーム機になった。マリオ、ドラゴンクエスト、ポケモン、ラブプラス、DSで大成功を収めたソフトも多い。DSは、性能で勝るPSP相手に販売数で大成功を収めた。

 ハードの性能はゲーム機としての成否に関係ないと結論づけるのは容易い。ただ、私はそれは嘘だと思う。

 DSとPSPとの間に生じた競争とその経緯は今後、様々な角度で論じられていくだろう。ただ、DSのシェアは私に言わせれば消費者による間違った選択の結果なのである。

 私は単純にハードウェアの性能でPSPが優位だからPSPを買うべきだったといっているのではない。ゲーム機の優劣はそれで何が出来るかの総合力なのは間違いない。それでもなお、消費者は誤った行動の結果、DSのシェアを押し上げ、本来の性能とは比例しない、いびつなシェアを任天堂が築き上げるのに手を貸したと主張したい。それはつまり任天堂と同じ戦略をとれば、どんな分野でも、「性能で劣る側が勝利を収める」ことは再現しうるのである。運の要素は強いだろうけれど、それでもある程度のところまでは行くだろう。

 ただし、私は詐術とも書いた。つまりDSの実力は上げ底された物であり、その詐術がばれれば自然に実力は元のバランスに補正されていく。次世代機が全く出ない状況で、PSPとDSを販売し続ければ、マジコンといった要素を排除できればだが、PSPのシェアはDSに対して逆転をしても何ら不思議ではない。実際、2010年末~2011年頭はPSPの本体不足という現実を招き、それは未だ解消されていない。

 現実として、DSとPSPの今後をずっと検証することは不可能なので、次世代機が出れば、DSとPSPの争いはDSの勝利と歴史に記される。

 私は消費者の誤った選択と書いた。これは、なぜ誤った選択なのだろう?DSは成功だ、ドラクエ、マリオ、ラブプラス、ポケモンが出たじゃないかと言われるかもしれない。

 因果関係が逆である。消費者が良しとしたから、DSの時代が長く続き、ドラクエ、マリオ、ラブプラス、ポケモンがDSで出たのだ。マリオ、ポケモンといった任天堂のゲームは、PSPだと絶対に出ないだろうというご指摘にはその通りだと申し上げる他ないが、DSが大コケすれば、DS2というべきDSの後継ハードが既に発売され、上記のソフトが既に投入されていても何ら不思議ではないと指摘したい。

 私の主張は、PSPは勝利し、DSは駆逐され、任天堂は新ハードをもっと速く投入して対抗するのが自然な成り行きだったのに、マーケティングの勝利により、任天堂の世代交代は遅れた、というものだ。

 逆の立場から見てみよう。過去の負けハードの歴史を見て、敗れたハードはじり貧に陥り、早々に市場から消える。もしくは子供などの特定層にアピールして凌ぐしか無くなる。サターンとドリームキャストの関係が好例だろう。

 DSが真の勝利者だとしたら、そのシェア数での決着がついたのはとうの昔で、とっくにPSPは販売中止していなくてはおかしい。現在のように本体が品切れになるという事態が起こることはない筈である。勝者であるDSの後継ハードが先に発売され、敗者であるPSPが旧世代ハードでそれを迎え撃つ事態など考えられない。いや、AMDとIntelのCPUのような事例もある。勝者が敗者に先んじて新製品を投入すること自体は珍しくない。しかし、敗者の製品が絶賛売り切れ中な事までは説明がつかない。DSは,PSP以上に性能が不足し、任天堂もその点は強く認識しているのだ。

 DSは勝者とされている。だが、その勝利は販売数で裏付けされているものの、それ以外の要素では証明が難しい。まぐれで勝ったといってもいい。いかに任天堂のマーケティング戦略が成功してしまったかだが、このことは任天堂を苦境に陥れる可能性がある。

 任天堂は今後、勝利を期待されることになるが、勝つために常道と云えることは高性能なハードを安価に提供することである。3DSとNGPの関係性は、公平に見てもDSとPSPの性能差の再現に近い。3Dといった付加価値を除いて、3DSがNGPに性能で勝る事はないだろう。つまり実力以外の要素で任天堂は勝たなくてはならなくなった。価格に関しては不明だが、25000円という本体価格は、Wii以上の値段で任天堂としては強気の価格設定と云える。

 3DSで、任天堂がDSの再現を行うことは極めて難しい。それは既存のDSユーザーの満足度がどの程度かに影響するからである。DSのユーザーの大半は、DSの性能をこれで良しと判断した層である。そして、勝利したハードは買い換えを必要としないというこれまでの経験則を重視している。

 つまりDSは勝ちハードであるが故に購入されたのであり、既存ユーザーには、勝ちハードであるが故に負けハードより長く使用可能でなければならず、破損するまで買い換えなど不要と考え、ゲームの性能差には拘らない消費層なのだ。しかもPSPを購入したような性能差を重視する層には、NGPというより高性能なハードが出てしまった以上、訴求力が弱まってしまった。

 私はDSを勝ちハードと考えていないが、DSを勝ちハードとしてしがみつく層はかなり厚いと考えている。しかもそういう層に3DSが売れる可能性については、かなり否定的に見ている。私はDS購入層とは違った判断の下に3DSを購入したけれど、DSユーザーの大半は3DSに簡単に移行しないだろう。むしろ、売り手の心理とは裏腹に、DSで十分と考え、ソフトを要求し続ける可能性が高い。

 3DSについては、DSが成功したが故の逆風という記事が今後登場するのではないかと予測している。が、DSは社会現象であって、勝ちハードではなかったととらえるのが正解ではないか。そして、社会現象は狙うことは出来るが再現することは難しい。

 価格という要素がある以上、NGPが勝ちハードになるかは何とも云えない。3DSにもチャンスはある。しかしながら、3DSにはDSという負の遺産が存在するのではないかと思えてならない。3DSでDS以上にソフトが売れるか? それを任天堂自らが証明しない限り、先はないのではないかと考えている。

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